SW


■概要
架線延線車編成を構成する車両のひとつであり、SW(StretchWagon)と呼称される。銘板には『延線車』と表記されているように、架線の延線張り替え作業を行う車両である。
新幹線では高速運転のため、架線の部分張替が不可能であり、数km間をドラム単位で張り替える必要がある。
開業初期はこの作業をモーターカーや梯子、高所台を用いて行っていたが、年間約250㎞(1968年当時)という膨大な距離の架線張り替えをする上では、

・施工精度の向上
・張替の所要人工、及び経費節減と所要時間の短縮
・作業環境の改善(照明、足場、休憩設備)

の改善が必要であり、専用作業車による機械化が望まれていた。
この要求に基づき誕生した作業車の1つが本車である。主用途はTWと編成を組んでのトロリ線張替となる。
また、トロリ線張替の他にちょう架線、補助ちょう架線の張替も可能である。

 

■構造
主要な装備としてドラムから架線の繰出し・巻き取りを行う延線巻取機、延線時に架線の片端を固定しておく引留装置、ドラムの積載などに使用するクレーン、万が一の架線通電時に作業員を保護する接地パンタを備える。

 

■世代
富士重工業製SWも他の同社製電気作業車と同様、生産時期によって大きくスタイルが異なっている。本稿では便宜上登場順に第〇世代として扱う。
第1世代のSWには機能・外観に大きな差は無いものの、1967年から1978年にかけて製造された同社製の初期の電気作業車と同様の命名規則であるRIM-21と、1979年から製造された用途別の命名規則を採用したSWのふたつの形式が存在する。

 


第1世代

昭和42(1967)年6月に半編成(SW(RIM-21)1両、TW(RIM-22)2両)が静岡に試作配備され、2年がかりで訓練や工法研究を行った。
その後各部改良を行ったものが昭和43年度末から昭和44(1969)年6月にかけて追加で3.5編成、各電気所に配備された。

延線及び捲取用に油圧によるドラムブレーキ付きのドラムジャッキ(延線機)を備える。この延線機は延線及び捲取張力を一定にできるようになっている。
連絡装置として、運転室と作業台間にはインターホンを、各車両の相互連絡用に単信式の無線電話を備える。

架線延線車編成は以下のように4両のTWの両端にSWを配置した形となる。

第1世代は2つの型式を内包しており、1967年から1978年にかけて導入されたものがRIM-21、1979年から導入されたものがSWである。
後年に製造された個体はライトケースに納められた縦2連の前照灯が2つ配置されており、SWが登場する1979年以前にこの形態の個体は目撃されていない。
このことから、単独の前照灯が2つ配置された個体はRIM-21であると推定される。

 

■ 諸元

全長 8400[mm]
全幅 3150[mm]
全高 4500[mm]
自重 22[ton]

 

■ エンジン

機関 185[PS]/1800[rpm]

 

■ 走行性能

最高速度 70[km/h]

 

RIM-21

東海道

 東北・上越?

SW

 


第2世代

平成4年よりJR東に導入されたモデル。のちにJR西もほぼ同型を採用した。
当時の富士重工カタログによると型式は『SW-1』となっている。
(これはTWも同様にTW-1となっている。)
車両前部に高運転台、後部には休憩室を備える。
このモデルでは重連統括制御を採用し、一人でも編成運転が可能となっている。
※従来は各車にオペレータを配置し、無線等で連絡を取りながら同調運転を行っていた。

引留装置の高機能化により、延線時の伸び量計測や一定張力の保持が可能となった。
また作業台備付の有線式リモコンを用いての運転も可能となり、作業性が向上した。
通常の運転台もツーハンドル式となっており、運転・装置制御の電子化が進んだと思われる。

加えて車両前後端には衝突防止センサが備わっており、編成分割作業時の安全性を高めている。

作業時の編成は第一世代同様にSW2両とTW4両で登場した。

加えて塗装色も従来保線機械の黄色一色から、JR東はピーコックグリーン主体、JR西はスカイブルーおよびシルバー主体の配色となった。

 

■ 諸元

重量 14.0[ton]

 

■ 走行性能

勾配 牽引重量 単車積載時速度 重量牽引時速度 積載荷重
水平線 20[t] 70[km/h] 60[km/h] 3[ton]
15‰ 20[t] 55[km/h] 30[km/h] 3[ton]

 

 


 

海外向けSW

■概要
アルゼンチン国鉄のロカ局の首都近郊区間電化用としてのRWと共に輸出が確認されている。
第1世代SWがベースと考えられ、軌間は1676mmの仕様となっている。

 


参考文献
1.日本国有鉄道新幹線総局『新幹線ハンドブック』財団法人 交通文化振興財団,1977年,p.188
2.新幹線総局『新幹線十年史』財団法人 交通文化振興財団,1975年,p.624
3.藤橋芳弘「カテナリ・メンテナンス①」『鉄道ファン』11月号,交友社,1992年,p.62-65
4.富士重工カタログ 電気作業車(延線車) [型式:SW]
5.富士重工カタログ<新型>電気作業用軌道モータカー(延線車)
6.滝沢伸一,『架線延線車』,鉄道電気,第20巻 9号,鉄道現業社,(1967/9)
7.佐々木勉,『架線延線車を使用して』,鉄道電気,第22巻 11号,鉄道現業社,(1969/11)
8.小林輝夫,藤橋芳弘,[『-新型-新幹線用架線延線車』,鉄道電気,第45巻 5月,鉄道現業社,(1992/05)
9.藤川央玖人『新幹線保守用車の紹介』,建設機械施工,75巻,3号,日本建設機械施工協会,(2023.3)