■概要
鉄道運輸機構が新幹線建設工事のために保有する車両。
スラブ軌道を敷設する目的の車両として鉄道運輸機構内ではスラブ軌道作業車という名前で一括りで呼ばれている。その中からスラブ運搬敷設車とレール送込み装置車について解説する。
■スラブ運搬敷設車
・概要
スラブ運搬敷設車は軌道スラブを所定の位置に敷設するために使用される車両である。
・構造
電源車とスラブ運搬敷設機があり、自走装置の有無で4種類に分けられる。
項目 | 諸元 | |||
A (電源車自走装置付) |
B (電源車自走装置無) |
C (スラブ運搬敷設機自走装置付) |
D (スラブ運搬敷設機自走装置無) |
|
全長[mm] | 4,700 | |||
全幅[mm] | 3,300 | |||
全高[mm] | 3,822 | 3,320 | 2,600 | |
重量[t] | 8.5 | 7.7 | 4.2 | 3.3 |
エンジン形式/ 定格出力 |
ディーゼル機関(水冷) 90[PS]/1,800[rpm] 75[PS]/1,500[rpm] |
‐ | ||
発電機定格出力/ 電圧/ 周波数 |
70[kW]~60[kW]/1,500[rpm] 220[V]~200[V] 60[Hz]~50[Hz] |
‐ | ||
自走速度 | 5[km/h] | ‐ | ‐ | ‐ |
電動機定格出力/ 電圧/ 周波数 |
‐ | 2.2[kW]/1,500[rpm] 220[V]~200[V] 60[Hz]~50[Hz] |
||
自走速度 | ‐ | 5[km/h] | ‐ | |
ブレーキ装置 | 無段可変速モータ(ブレーキ付) | ‐ | 無段可変速モータ(ブレーキ付) | ‐ |
軌間 | 3,000[mm] |
※上記表は文献4)による。
上記諸元表は1970年代のものであるので2010年代のものとは異なる部分もあると思われるが実機と文献とを見比べた限りでは大きなところは変更がないように思える。
上記表のA~D車を組み合わせて以下の図のようなスラブ運搬敷設車編成を作る。
下記画像では電源車の発動発電機が確認できないが整備性を考慮して容易に脱着ができるようになっているものと思われる。
電源車(A車)は4軸4輪を無段変速モータにより駆動し走行することができる。
スラブ運搬敷設機(C・D車)には横梁に巻上機(電動チェーンブロック)が設けられており、スラブを吊り上げて所定位置まで運搬する。
なお、敷設車は鉄製トロに搭載することが可能で敷設現場へはトロにより移動する。
・作業の主な流れ
軌道スラブは工場で作られ陸路で軌道基地へと運ばれる。検査後クレーンにより鉄製トロへと積み込まれて仮軌道上を走行し敷設現場へと運ばれる。
スラブ運搬敷設車は軌間3[m]の車両である。そのため敷設現場ではスラブ運搬敷設車用の軌道を作った上で車両を載線する。
どういうことかというとスラブ軌道を敷設する区間ではモータカーやトロが走行する軌間1,435[mm]の軌道とスラブ運搬敷設車が走行する軌間3[m]の軌道が一時的に並行に設置されるということである。軌道スラブを運搬してきたトロはスラブ運搬敷設車の中にもぐりこむ形となる。
そしてトロからスラブ運搬敷設車へと軌道スラブが授受される。
軌道スラブを受け取ったスラブ運搬敷設車は所定の位置で軌道スラブを下ろし設置を行う。
■レール送込み装置車
レール送込み装置車は200[m]の長尺レールをコンクリート路盤上に下ろしていくための車両である。編成としてはレール送込み装置車を先頭に鉄製トロを26[両]つないで200[m]レールを載せ、後方からモータカーで押して走行する。
編成は敷設された仮軌道上を走行し、仮軌道の先端まできたところで当車両がレールを路盤へ向けて送り出していく。
レールは送込み装置車に装備されたローラーによって送りだされる。200[m]のレールを送り出すために要する時間は約15[分]である。送り出されたレールは木製の台に固定され軌間と高さ、通りを検測して仮軌道の設置完了となる。
参考文献
1)九州新幹線建設局『九州新幹線西九州ルート(武雄温泉・長崎間)の軌道敷設工事について』,鉄道・運輸機構だより,No.69,鉄道建設・運輸施設整備支援機構,(2021.04)
2)広栄工業株式会社『線路新設』
https://koueikougyou.jp/pages/12/
(2023.01.04)
3)鉄道運輸機構大阪支社 小松鉄道軌道建設所『ミリ単位の精度で進められる軌道敷設。鉄道のまち・小松に新たなレールが伸びる』
https://www.jrtt.go.jp/project/working-report/hokuriku/no68/
(2023.01.04)
4)湯本幸丸『写真解説 保線用機械 改訂増補第5版』,交友社,(1980.12)
5)日本国有鉄道 特開昭50-114704『スラブ敷設装置』
6)株式会社トキオ 特開2010-116026『スラブ運搬敷設車』
スラブ軌道作業車