概要
現在、富士山麓電気鉄道(元富士急行)が1両所有しており、主に富士山駅に隣接する電車修理工場内で入換を行っている。以前は小田急電鉄で活躍しており、複数台導入されていたことが確認されている。
改造概要
導入当初、ダンプトロを前後に連結する編成で運転が行われていたが、運転手からの死角が大きいことや、安全確認・進路確認が不十分であるなどの問題が発生。また牽引重量が増加したため、昭和53年にエンジンのコントロールを改造し、モータカーを両端で挟む編成に変更された。
△図1. MR755の運用と形状の変化
・旧方式によるエンジン回転制御
両端にモータカーを挟む編成に在来型遠隔制御装置(図2)を装備、モータカー間に電気引通し回路を設け、片側のモータカーで反対側のエンジン回転制御を行い、同調させる機構。しかし作業での小移動の際、速度の微調整が難しく停止位置が定まらないことや、高度な運転技術を要するなどの問題が生じた。
△図2. 在来型遠隔制御装置 文献1)
・新型遠隔制御装置(図3)
昭和61年に重連使用を目的として20tモータカー2台が増備され、これに合わせ新たな重連方式を導入し、昭和62年4月に実用化された。新しい方式は、エンジン回転制御を無段階化し、任意でエンジン回転、速度制御が可能となっている。無段階制御装置は海外製のものが採用された。またこのモータカーの最大の特徴である2エンド側に後付けされた運転台(図4)は、この際に行われた外郭改造で取り付けられたと考えられる。従来のボンネット側とは反対側に運転台を設けるこの構造は、現在小田急電鉄で活躍するモータカーでも採用されている。
△図3. 新型遠隔制御装置 文献1)
△図4. 2エンド側の後付けされた運転台
諸元
■ 寸法・重量
長さ | 6,390 [mm] |
幅 | 2,735 [mm] |
高さ | 3,100 [mm] |
自重 | 13.5 [t] |
■ エンジン
エンジン型式 | 水冷6シリンダーディーゼル |
総排出量 | 10,179 [cc] |
エンジン出力 | 175 [PS] / 1,600 [rpm] |
△エンジンルーム
中央下付近に7個の連なるシリンダーは在来型遠隔制御装置のもの。
■ 牽引性能
線路勾配 [‰] | 曲線 [m] | 牽引重量 [t] | 走行速度 [km/h] | |
単車 | 牽引 | |||
0 | 200 | 360 | 50 | 18 |
200 | ||||
5 | 270 | 15 | ||
150 | ||||
10 | 225 | 45 | 12 | |
125 | ||||
15 | 180 | 10 | ||
100 | ||||
25 | 135 | 40 | 8 | |
75 |
参考文献
1)山崎久一『小田急における軌道モータカーの無段階制御の開発』,新線路,42巻,5号,株式会社鉄道現業社,(1988.5)
2)『鉄道データファイルDVDコレクション7小田急車両のすべて』,ディアゴスティーニ・ジャパン,(2004)