80_軌陸杭打機


■概要
杭打機とは建機をベースとして本体の油圧を利用して杭打ちを行う機械であり、軌陸杭打機は杭打機に軌道走行用装置を備えたものである。

一般的な杭打機の例として以下の画像を挙げる。

リーダレス杭打機の一例。△文献1)より

鉄道工事で用いられる杭打機は上空制限(4m)があることが多いため高さ制限がある中でも作業が行うことができるものになっている。
鉄道駅構内で見られる杭打機は大きく分けると伸縮式のリーダーを持つ低空頭杭打機とリーダレス杭打機に分類される。

■低空頭杭打機
低空頭杭打機とはリーダを持つ杭打機の中で高さ制限のある中での作業を念頭に置いて製作されたものである。
リーダとはガイド部分を指す。リーダを持つ杭打機はガイドに沿って杭を打ち込むため垂直に打ち込むことが容易となっている。


△リーダ部拡大

駅構内に留置されている際にはアタッチメント類が外されていることが多く、このままの状態で穴掘りや杭打ちを行うわけではない。
また、オーガ部はスクリュ削孔タイプと鋼管回転埋設タイプがある。
下記画像は鋼管回転埋設タイプの作業手順である。

△文献4)より

低空頭杭打機が鉄道駅構内で使用されることが多い理由として鋼管回転埋設工法を用いることができる点が挙げられる。線路上空に構造物を構築する際基礎杭の施工条件は線路の間、架空線やホーム屋根の下など狭隘で低空頭な線間作業となる。このような条件下でも施工可能な工法として深礎杭やTBH杭などの在来工法もあるがこれらの工法は掘削の際に孔壁防護用として地盤改良等の補助工法が必要となりコストアップや工期の長期化の原因になっている。鋼管回転埋設工法は補助工法が不要なため他工法よりも有利となっている。

 

日中の駅で見かける際にはアタッチメント類は軌陸トラックに積載された状態で置かれていることが多い。

また、軌陸杭打機のそばに軌陸トラックがアタッチメントを積載した状態で留置されていることもある。


△軌陸杭打機(SPD11-3)と軌陸トラックに積まれた回転圧入部が確認できる

軌陸杭打機及び軌陸トラックは作業開始と共に軌道上を移動し作業現場付近でクレーン等を用いて組み立てられて作業にあたるものと思われる。

 

■リーダレス杭打機
リーダレス杭打機は建機をベースとして杭打ちや穴掘りに特化したアーム部を持ったものである。
リーダを持たないことで上空に支障物のある現場での低空頭施工が可能というメリットを持つ。


△文献5)より。JRの駅改良工事の時の画像とのこと

載線時においても軌道走行装置自体のジャッキストローク圧で本体を持ち上げるため軌道進入時の効率化が図れる。木製覆工敷設が大幅に低減され、オーガ削孔~注入~建て込み~ゼロバイブロによる定着~打設といった一連の施工を円滑に行うことが可能。 軌道走行部は1,067[mm]、1,372[mm]、1,435[mm]の軌間に対応している。

 

駅構内での作業に活躍する杭打機であるが、必ずしも軌道走行を行うわけではないので軌陸杭打機と普通の杭打機が混在していることも珍しくない。

 

参考文献

1)株式会社エムオーテック『リーダレス工法』
https://ssl.motec-co.jp/construction/cat3/post_41.html(2022/08/04)

2)春日基礎株式会社『軌陸式リーダレス杭打機RX2300』
https://www.kasuga-kiso.co.jp/machine/rx2300train/(2022/09/03)

3)小原敦『低空頭・狭隘施工用小型基礎機械』 建設機械 2006.11
https://www.hitachicm.com/global/wp-content/uploads/2015/06/C0608-04.pdf(2022/09/09)

4)沼田佳久、齋藤雅春、武田茂嗣『補助工法が不要な杭の開発』(鉄建技術報告2005 No.19)
https://www.tekken.co.jp/media/04b3763ef7f8ced918b53bab766b0e2bbead699b.pdf(2022/09/09)

5)恵比寿機工株式会社 『事業概要 – 工事部門(工種工法):軌陸』
http://www.ebisukikou.co.jp/business/kiriku.html(2022/09/09)