MCR801

概要


MCR801は、北陸新幹線のJR西日本区間、富山以東にて用いられる800馬力級のモータカーロータリーである。

2015年3月に開業した北陸新幹線長野-金沢間は、上越新幹線とならんで日本有数の豪雪地を通過している。東海道新幹線関ケ原・米原地区や上越新幹線では、散水することで雪の舞い上がりを防ぐ、もしくは融雪するスプリンクラー設備が備えられているが、北陸新幹線においては水源の確保が難しく、スプリンクラーに頼らない雪害対策設備が求められた。

そこで、高架橋上の軌道を嵩上げして、高架橋に雪を貯められるスペースを設けた貯雪式高架橋が採用された。年間最大積雪深さが200 cmを超え、かつ人家の密度が低い区間では、高架橋の両外側に投雪ガイド板を設置し、雪を高架橋下に投雪できる構造とした側方開床式貯雪式高架橋が採用されている。なお、市街地や道路交差部では高架橋下に投雪できないため、高架橋上に温水による融雪パネルが設置される。
富山以東においては、年間最大積雪深さが大きく、かつ人家の密度が低いため、側方開床式貯雪式高架橋と融雪パネルが多く用いられている。
一方、富山以西の年間最大積雪深さが160 cm未満の区間では通常のスラブ軌道内の余地に雪を貯める閉床式貯雪型高架橋が採用され、年間最大積雪深さが160~190 cmの区間では閉床式貯雪型高架橋の防音壁の上部に幅1 mの雪覆いを設けた半雪覆式貯雪型高架橋が採用されている。この富山以西区間では、MCR601が用いられる。

このため、この区間において投雪ガイド板や融雪パネルなどの目標へ投雪が可能であり、またこの区間以外においても高架橋上に貯められた雪を掘り下げる「側溝除雪」が可能なモータカーロータリーが求められた。このために開発された大馬力モータカーロータリーがMCR801である。

MCR801の特徴として、ブロア一体型シュートが挙げられる。通常、ブロアにより飛ばされた雪はブロアケースの投雪口から別体のシュートに導入され、シュートを伝って投雪される。しかし、投雪ガイド板や融雪パネルなどの目標へ確実に投雪が求められるため、MCR801ではブロア一体型シュートが採用されている。このため、シュートをブロアと一緒に傾けられる形となっている。

貯雪帯を掘り下げる側溝除雪は、ロータリー装置の掻寄せ翼の上下機構を用いて行われるが、通常よりも低い位置にある雪を上方かつ中央のオーガへ掻寄せられるように形状が考慮されている。

除雪幅は4,800 mm、除雪深さ490 mm(側溝部790 mm)の条件にて除雪速度4 km/h以上の性能を有している。

2018年11月現在、11両存在する。

 
 
参考文献


1)森山陽介, 『JR西日本エリアにおける北陸新幹線の雪害対策』, 新線路, 69巻11号, 鉄道現業社, (2015年11月)
2)伊藤大介・鈴木洋平・森山陽介, 『JR西日本エリアにおける北陸新幹線の雪害対策』, 新線路, 72巻11号, 鉄道現業社, (2018年11月)
3)篠原鉄也・鈴木洋平・平井相太郎・江尾総人, 『北陸新幹線における超豪雪時を想定した輸送力確保の取組み』, 新線路, 74巻9号, 鉄道現業社, (2020年9月)
4)新潟トランシス株式会社, 『雪でも定刻〈かがやき 500号〉』, IHI技報, 55巻3号, 株式会社IHI, (2015), https://search.ihi.dga.jp/i-viewer_c/?p_no=1&m_p=4&p_id=13557&file_name=https%3A%2F%2Fwww.ihi.co.jp%2Fihi%2Ftechnology%2Freview_library%2Freview%2F2015%2F_cms_conf01%2F__icsFiles%2Fafieldfile%2F2020%2F03%2F18%2F0be157f2b98adf51f9ac81b12940cbed.pdf&t=%E9%9B%AA%E3%81%A7%E3%82%82%E5%AE%9A%E5%88%BB&kw=%E9%9B%AA%E3%81%A7%E3%82%82%E5%AE%9A%E5%88%BB