TW


■概要
車両全長に相当する昇降式の大面積の作業台を設けた電気作業車。
架線延線車編成を構成する車両のひとつであり、TW(Tower Wagon)と呼称される。銘板には『作業車』と表記されている。

 

■施工法
主用途はSWとTWからなる架線延線編成を組成しての作業である。

1.新線延線
SWを先頭にSWがドラムから繰り出したトロリ線を後続のTWの作業台に配置された作業員が仮ハンガーと呼ばれる金具で吊架線あるいは補助吊架線から吊り下げていく。

2.金具切替
新線の延線が完了すると、張替区間を数両のTWで分担して旧線のハンガー及び曲線引を新線に、新線の仮ハンガーを旧線に切り替える。

3.旧線撤去
TWを先頭にTWが仮ハンガーを撤去した旧線を後続のSWがドラムに巻き取っていく。

大まかに上記の手順で実施される架線張替の中で、TWは主にハンガーに関わる作業を担当する。
ハンガーの間隔は電気工作物(新幹線電車線路)設計施工標準によれば5[m]間隔を標準として定めている。
通常であれば一か所のハンガーを施工するごとに車両移動が必要となるが、TWはハンガー2箇所の同時施工を可能とすべく車体全長に相当する作業台を装備している。

 

■世代
富士重工業製の他の電気作業車同様、生産時期によって大きくスタイルが異なっている。本稿では便宜上登場順に第〇世代として扱う。
第1世代のTWには機能・外観に大きな差は無いものの、1967年から1977年にかけて製造された同社製の初期の電気作業車と同様の命名規則であるRIM-22と、1977年から製造された用途別の命名規則を採用したTWのふたつの形式が存在する。

 


第1世代

トロリ線の張替作業を行うため、昭和42年6月に半編成(SW(RIM-21)1両、TW(RIM-22)2両)が静岡に試作配備され、2年がかりで訓練や工法研究を行った。
その後各部改良を行ったものが昭和43年度末から昭和44年6月にかけて追加で3.5編成、各電気所に配備された。
同世代の延線車(SW)と同型エンジンを搭載しているが、車体構成としてはむしろ同世代のMWに近い構造となっている。
運転室を除いた車体上部全面に18㎥の電動式の昇降作業台が備わっており、その長く広い作業台により、同時にハンガ2本までの掛替作業が可能となっている。
連絡装置として、運転室と作業台間にはインターホンを、各車両の相互連絡用に単信式の無線電話を備える。
また、作業台下部に12人収容可能な休憩室が設けてある。

 

第1世代は2つの型式を内包しており、1967年から1977年にかけて導入されたものがRIM-22、1977年から導入されたものがTWである。
後年に製造された個体はライトケースに納められた縦2連の前照灯が2つ配置されており、TWが登場する1977年以前にこの形態の個体は目撃されていない。
このことから、単独の前照灯が2つ配置された個体はRIM-22であると推定される。なお、RIM-22を2連の前照灯に改造した形態も確認されており留意が必要である。

 

■ 諸元

全長 8400[mm]
全幅 3150[mm]
全高 4500[mm]
自重 17.2[ton]

 

■ エンジン

機関 185[PS]/1800[rpm]

 

■ 走行性能

最高速度 70[km/h]

 

■ 作業装置

作業台面積 約18[m^2]
作業台昇降量 3~5[m]

 

RIM-22

 

TW

 


第2世代 (TW-1)

平成4年よりJR東に導入されたモデル。のちにJR西もほぼ同型を採用した。
従来の同社製電気作業車とはスタイルを一新しており、車両前後に背の低い運転室、中央部に機関室の配置となった。
当構成は後の電気作業車でも踏襲されている。

この配置によって車両上部全面が昇降作業台となり、面積は約25m^2に拡大した。昇降方法も電動スクリューシリンダから油圧シリンダに変更となっている。
また作業台備付の有線式リモコンを用いての運転も可能となり、作業性が向上した。
通常の運転台もツーハンドル式となっており、運転制御の電子化が進んだと思われる。

加えて車両前後端には衝突防止センサが備わっており、編成分割作業時の安全性を高めている。

 

■ 諸元

重量 22.0[ton]

 

■ 走行性能

勾配 牽引重量 単車積載時速度 重量牽引時速度 積載荷重
水平線 20[t] 90[km/h] 80[km/h] 1[ton]
15‰ 20[t] 70[km/h] 50[km/h] 1[ton]

 

 


バケット付きTW(TW-1)

JR西日本で確認されている電気作業車。型式はTW-1であるが、前述の第2世代TWと外観が異なる。
第2世代TWの車体を延長し、片側の運転室が作業台の昇降油圧シリンダより車端側に移設されている。また、高所作業用バケットが延長部に追加されている。

現在1両のみ確認されている。

 


TWと類似している車両

型式は不明であるが、車両の特徴からTWと類似している車両についても下記にて紹介する。

MiC21

平成6年よりJR東日本に導入された車両。
型式は不明であるが、外観が第2世代TWに酷似していることから本ページで扱う。

MIC21は「Maintenance & Inspection car 21」の略称である。
本車は新幹線の高速化試験に伴う各種検測用に開発された保守用車であり、従来の検測機能に加えCCDカメラによる画像処理が可能で、より質の高い検査が可能になっている。

作業台上には従来のTWと異なり、大型の菱形パンタグラフを設置しているのが特徴である。

現在1両のみ確認されている。

 


参考文献
1.日本国有鉄道新幹線総局『新幹線ハンドブック』財団法人 交通文化振興財団,1977年,p.188
2.新幹線総局『新幹線十年史』財団法人 交通文化振興財団,1975年,p.624
3.藤橋芳弘「カテナリ・メンテナンス①」『鉄道ファン』11月号,交友社,1992年,p.62-65
4.富士重工カタログ 電気作業車(作業車)[型式:TW]
5.滝沢伸一,『架線延線車』,鉄道電気,第20巻 9号,鉄道現業社,(1967/9)
6.佐々木勉,『架線延線車を使用して』,鉄道電気,第22巻 11号,鉄道現業社,(1969/11)
7.『電気工作物(新幹線電車線路)設計施工標準』,日本国有鉄道 電気局,(1974.8)
8.小林輝夫,藤橋芳弘,[『-新型-新幹線用架線延線車』,鉄道電気,第45巻 5月,鉄道現業社,(1992/05)
9.藤川央玖人『新幹線保守用車の紹介』,建設機械施工,75巻,3号,日本建設機械施工協会,(2023.3)
10.鷹田寛,『魅力ある職場をめざして』,鉄道と電気技術,第5巻 3号,日本鉄道電気技術協会,(1994/3)