バラスト更新機


■概要
古い発生バラストの排出と新バラストの投入が同時に行える新方式道床交換作業車でNBS(ニューバラストスクレーパー)と呼ばれる。
カッターバー下部の爪が回転することでマクラギ下の道床を掘削する。掘削された発生バラストはアッパーコンベアーに載せられ後位に連結されたホッパ車へと送られる1)
新バラストは後位のホッパ車よりアンダコンベアーより供給され投入される。
作業時は牽引用のモータカーやホッパ車と編成を組んで使用される。

平成14(2002)年2月に導入され4月より各種試験が行われた2)のち平成15(2003)年3月より本格的に本線での稼働が始まった3)。その結果は平成16(2004)年度に4編成投入された量産車に反映されている4)
JR西日本向けのNBSは旧平成18(2006)年度より3編成いる旧BSを置き換える形で3年連続で1編成ずつ導入されている5)

 

■NBS開発コンセプト
労働災害の危険性を減らすこと、作業効率を向上させ1夜あたりの施工延長を伸ばすこと、隣接線を使用しない計画柔軟性の高い機械編成で施工できることを目的として以下の3つのコンセプトが掲げられた。
1.パッキンレス化
2.自動化、省人化
3.1線クリア方式
このコンセプトを実現させるべく自走式後進掘削方式、排出・投入の重層ベルトコンベア、バラスト掘削車・運搬車連結方式などのアイデアによりNBS編成は完成した。

 

■NBS登場以前
NBS登場以前にも道床更換用の保線機械としてバラスト作業車(BS・バラストスクレーパー)、トンネル兼用バラスト作業車(TBS・トンネルバラストスクレーパー)が存在した。

△トンネル兼用バラスト作業車ことBUC200。文献3)より

これら作業車にはいくつか問題があった。

1.事前準備
作業に先立ちマクラギ間のバラストを除去しスクレーパーチェーンの一部を挿入する事前作業が必要だった。チェーンは作業開始とともにBS本体のスクレーパーチェーンに結着させるものである。

2.ワイヤー牽引
BS、TBSは自走機能がなく約60[m]離れたマクラギにアンカーを取りワイヤーが作業車を引っ張る方式であった。ワイヤーのアンカーを離れた場所に取る手間が生じるほか掘削場所付近に強力な張力が掛かったワイヤーがあることとなり誤って切断する危険性があった。

3.パッキンの挿入・撤去
パッキンとは軌框ききょうの落下を防ぐために挿入されたマクラギを1/3程度に切った仮受台のことを指す。既存車は前進掘削方式であったため掘削した部分が落下しないようにパッキンを挿入する必要があった。重たいパッキンを人力で軌框下に潜って挿入する必要がある上そのパッキンの高さが正確に揃っていないと新バラスト取り卸し後の軌道狂いを生じさせてしまう。
また新バラスト取り卸し後にパッキンを撤去するが撤去後はバラストに大きな穴が残る状態となりその穴埋め、バラストの搔き均しに多大な手間を要した。

4.発生バラストの搬出
掘削した発生バラストを速やかに除去するために隣接線にバラスト運搬車編成を待機させることとなり隣接線を占有する。またバラストを取り卸すダンプトロでは均一にバラストを取り卸せるように作業員が荷台内での搔き均しをすることも必要だった。

NBS導入により従前のTBS施工と比べて大幅に重労働から解放される結果となった。

作業内容 TBS NBS
事前 仮受け台等の材料運搬 必要 不要
施工当日 材料搬入・搬出 必要 不要
再用バラスト撤去 必要 不要
バックホウによる先堀り 必要
カッター挿入箇所掘削 必要
仮受け台の設置 必要 不要

△文献2) p.28 表-1より引用

 

■NBSにおけるバラストの流れ
NBSは後進掘削方式を採用している。
アンダーカッターにより掘削した発生バラストはNBSのアッパーコンベアーにより後位に連結されたホッパ車へと送られる。その一方で新バラストはアンダコンベアーによりホッパ車から送られて掘削した箇所に散布される。

△NBS内でのバラストの流れ。文献6)より

 

■走行装置
NBSは牽引と自走機能を有し2軸のボギー台車2つと台枠で構成され、台枠上には運転室、機関室、動力装置、バラスト搔き出し・排出装置、電気装置等を搭載している。メインエンジン、サブエンジンを動力源として油圧ユニットを駆動しカッター等の作業装置の駆動や油圧モーター駆動による自走を行う。2つのエンジンの諸元は以下の通り。

・メインエンジン諸元

項目 諸元
形式 CAT C9ディーゼルエンジン
定格出力 261[kW]/1,800[rpm]
総排気量 8,800[cc]
気筒数・径×行程  直6-112[mm] × 149[mm]

・サブエンジン諸元

項目 諸元
形式 いすゞ DD-6BG1Tディーゼルエンジン
定格出力 91.2[kW]/1,800[rpm]
総排気量 6,494[cc]
気筒数・径×行程  直6-105[mm] × 125[mm]

 

■作業装置
1.掘削装置
ブーメラン形状のカッター装置と姿勢制御装置から構成される掘削装置を持つ。
掘削されたバラストはカッター装置の中を搔き上がりカッター装置最上部からコンベアー(第1アッパーコンベアー)へ落下して搬送される。姿勢制御装置は油圧シリンダを用いてカッター装置の上下・左右・揺動といった姿勢を制御する。

2.ベルトコンベアー
第1・第2アッパーコンベアーと第1・第2アンダコンベアーを持つ。後方の第2アッパー/アンダコンベアは固定されているが、前方の第1アッパー/アンダコンベアーは油圧シリンダにより前方への張り出し調整が可能となっている。

3.防音装置
沿線への騒音対策として後述の通り量産車から作業時掘削部の左右両側を防音パネルで覆っている。防音パネルはラジコン操作盤で操作し油圧駆動で展開・収納ができる。

 

■先行導入車からの改良点
前述の量産車編成には先行導入車からの改良が盛り込まれている。
1.新バラスト投入シュートのリモコン化
先行導入車では新バラスト投入シュートの振り分けは人力で行っていたが量産車ではリモコンによる制御となった。

2.掘削カッター
先行導入車ではカッター挿入側に応じてカッター本体を取り替える必要があったが量産車では左右スライド式となった。

3.防音対策6)
掘削時の作業騒音低減のため先行導入車の防音カーテンに加え量産車では防音パネルが採用となった。

 

参考文献
1)遠山司朗『新型道床更換車(NBS)の試行』,新線路,第56巻8号,鉄道現業社,(2002.08)
2)山田篤『新型道床更換車(NBS)の試行』,新線路,第57巻7号,鉄道現業社,(2003.07)
3)森川義行『TBSによる分岐器道床更換』,新線路,第53巻10号,鉄道現業社,(1999.10)
4)近藤輝政『NBS導入による新しい道床更換システムの確立』,新線路,第59巻1号,鉄道現業社,(2005.01)
5)佐川雄『道床部分修繕(NBS)施工における作業効率向上』,新線路,第65巻2号,鉄道現業社,(2011.02)
6)尾島智行『片持式道床掘削機・もも太郎』,新線路,第62巻4号,鉄道現業社,(2008.04)
7)吉田昌平『新方式道床更換用保守用車(NBS)の本格導入』,新線路,第59巻6号,鉄道現業社,(2005.06)
8)天間俊輔『車種別機械概要⑪ 道床更換用保守用車』,日本鉄道施設協会誌,2018年第11号,日本鉄道施設協会,(2018.11)
9)片山啓一『新型バラスト更新機編成の導入』,新線路,第61巻6号,鉄道現業社,(2007.06)

 

脚注
1)文献5) p.36および文献4) p.36。JR東海は「1線クリア方式」で作業時に隣接線を占有しないが、JR西日本では発生バラストは隣接線のバラスト運搬車(ダンプトロ)編成に排出されるため隣接線を占有するという違いがある。
2)文献1) p.62。
3)文献4) p.37。
4)文献7) p.5。
5)文献9) p.1。
6)西日本向け車両には防音パネルは装備されていない。