写真:作業中のRM 74 U
日本鉄道施設協会「活躍する新型バラクリ」『鉄道線路』25巻6号,1977年,写真p.より
RM 74 UはPlasser & Theurer製の道床交換作業車である。日本へは1台が導入された。
■概要
掘削幅を拡大して分岐器道床を掘削中のRM 74 U
Plasser & Theurer『BETTUNGSREINIGUNGSMASCHINE RM 74-U』より
SLUB/deutche fotothek,Plasser & Theurer,Sächsische Landesbibliothek–Staats-und Universitätsbibliothek Dresden
PURL/https://www.deutschefotothek.de/documents/obj/86004401
1974年より生産された60t級の大型機で、Plasser & Theurerで初めて分岐器の道床交換に対応した機種である1)。篩い分け装置を持つバラストクリーナーであり、機器配置や油圧モーターで走行する仕組み等はRM 62とあまり変わりないが、随所に改良が施されている。
本機種はスクレイパーチェーンに中間ピースを挿入することで掘削幅を最大7.72mまで拡大することができる。これにより、分岐器設置個所における道床交換作業が可能となった。レールをこう上しながら作業する機能も備えている2)。
RM 74 Uの概要図
越前 忠夫・須藤 博「バラスト更新機作業」『新線路』33巻9号,1979年,pp.40-41.より
また、従来の道床交換作業車はウェストコンベアが車体から長く突き出るため、回送時には控車の連結が必要であったが、本機種はウェストコンベアを折り畳むことができるため、控車が不要となった。そのほか、キャビンには防音材が内貼りされ、チェーンやバラストの通り道にはゴムコーティングやカバーが施されるなど、防音対策にも力が入れられている3)。
■運用
回送用運転台側から見たRM 74 U
日本鉄道施設協会「新しく開発・投入された保線機械」『鉄道線路』24巻10号,1976年,写真p.より
本機種は、尼崎機械軌道区で使われていたMATISA 8 CB 5(ヤ110)の老朽置換用として、1976年に国鉄が1台を導入した。主に関西地区で東海道本線や山陽本線の道床交換に使用されたという。本機は8 CB 5(ヤ110)とは違い「車両」扱いとはならなかった。また作業方式は下図のように、隣接線のトロ・貨車に旧バラストを排出する、一般的な複線作業方式で行われた。なお、併せて作業する仕上げ用のマルタイとして、国内では本機と同じく尼崎機械軌道区のみに配置されていたTamper UDEJが用いられた4)。
尼崎機械軌道区におけるRM 74 Uを使用した道床交換作業の概要
越前 忠夫・須藤 博「バラスト更新機作業」『新線路』33巻9号,1979年,pp.40-41.より
日本における外国製道床交換作業車の例に漏れず、本機種も騒音が激しく、また粉塵の発生量も甚だしいという問題に悩まされた。騒音対策が施されているにもかかわらず、周辺1mで90から100dB以上の騒音が観測され、また粉塵は風下で6分間に508.5㎎/m^3もの値が観測されたという5)。このため側面を防音シートで覆ったり、粉塵対策の散水ノズルや集塵機が設置されるなどの改造が施された6)。
側面を防音シートで覆ったRM 74 U
松田 務「バラクリ3年…:今年は「バラスト=クリーナー」」『トワイライトゾ〜ンMANUAL』6号,1997年,pp.182-193.より
その後、国鉄末期に尼崎機械軌道区が解散してからは全く使用されず、JR尼崎保線区→宝塚線保線区に1990年代後半まで保管されたままになっていたという7)。
■諸元
以下は国鉄に導入された個体の諸元である。カタログスペック上は550m^3/hもの作業能力があるとされるが、国内の文献では控えめな数値が掲載されている8)。
全長 | 26000[mm](作業時) 23000[mm](回送時) |
全幅 | 4000[mm](作業時) 3000[mm](回送時) |
全高 | 4200[mm](作業時) 4100[mm](回送時) |
自重 | 60[t] |
作業能力 | 120~160[m^3/h](全更換時) 250~350[m^3/h](篩い分け時) |
回送速度 | 48[km/h] |
エンジン | Klöckner Humboldt Deutz 355[PS]/2050[rpm] |
■文献
1)Klaus Riessberger・Rainer Wenty・Michael Zuzic「60 years of modern ballast cleaning machines: state-of-the-art machine technologies for achieving an excellent ballast ckeaning quality (Part 2 of 2)」『Rail Engineering International Edition』2021-1号,2021年,pp.7-12.
2)Plasser & Theurer『BETTUNGSREINIGUNGSMASCHINE RM 74-U』,発行年不明(1976年頃?),Plasser & Theurer.日本鉄道施設協会「活躍する新型バラクリ」『鉄道線路』25巻6号,1977年,写真p.ただし日本国鉄で分岐器道床交換機能が使われたかは不明。
3)Plasser & Theurer『Bettungsreinigungsmaschine für Gleise und Weichen RM 74-U』,発行年不明(1975年頃?),Plasser & Theurer.
4)越前 忠夫・須藤 博「バラスト更新機作業」『新線路』33巻9号,1979年,pp.40-41.鉄道現業社「バラスト更新機械による道床更新作業が始まった(大阪局)」『新線路』30巻10号,1976年,p.60.
5)日本労働者安全センター「国労・尼崎機械軌道区 モーレツ粉じん」『月刊いのち』15巻8号,1981年,p.48.
6)松田 務「バラクリ3年…:今年は「バラスト=クリーナー」」『トワイライトゾ〜ンMANUAL』6号,1997年,pp.182-193.源野 武「バラストクリーナ(RM74u)の改善」『新線路』36巻6号,1982年,p.35.
7)松田,前掲6.
8)越前・須藤,前掲4.