8 CB 5

写真:8 CB 5バラストクリーナー(ヤ110)
小西 秋雄「国鉄大阪局に配属された改良型マチサバラクリ」『鉄道線路』8巻8号,1960年,グラフp.より

 


 

8 CB 5は、MATISA製の道床交換作業車である。

本機種は日本国鉄において「車両」として扱われたが、実際には保守用車メーカーが設計・製造した保守用機械であり、本DBの掲載対象とする。

 

■概要

8 CB 5の広告
Simmons-Boardman Publishing Corporation『Railway Track and Structures』56巻8号,1960年,p.16.より

本機種は3 CB 5(ヤ110)に続いて国鉄が導入したバラストクリーナーである。1960年に1台が輸入され、ヤ110形ヤ110号の名称が与えられた1)

 

8 CB 5(ヤ110)の概要図
貨車技術発達史編纂委員会編『日本の貨車:技術発達史』,2008年,日本鉄道車輌工業会,p.258.より

8 CB 5(ヤ110)の台車に取り付けられた油圧モーター
村山 煕「新しい保線機械」『交通技術』15巻10号,1960年,pp.32-33.より

3 CB 5の改良型に当たり、基本的な構造は大差ないが、最大の違いは、台車に装備した油圧モーターにより作業走行する方式に変更された点である。これにより、ワイヤー巻き取り式よりも扱いが簡易になった。また散布コンベアも自動で旋回する改良が加えられた2)。なお、本機は配備直後から黄色塗装だったと思われる3)

 

後方から見た8 CB 5(ヤ110)
村山 煕「新しい保線機械」『交通技術』15巻10号,1960年,pp.32-33.より

この8 CB 5(ヤ110)は尼崎機械軌道区に配置され、関西地区の道床交換作業に使用された。本機も騒音問題を抱えており、使用可能区間を制限されていたが4)、東京地区に配備された3 CB 5(ヤ100)とは違い、関西ではある程度活用できでいた模様である。東京で失敗した単線式軌道更新法は関西でも上手く運用できなかったものの、本機は1974年度までに総延長122.4kmの道床交換作業に使用されたという5)

その後、1976年に後継機としてPlasser & Theurer製のRM 74 Uが用意され、本機は1978年度に廃車された6)

 

■諸元

以下は国鉄に導入された個体の諸元である7)

全長 15200[mm]
全幅 4700[mm](作業時)
全高 3800[mm]
自重 46[t]
掘削深さ(マクラギ下面より) 240~500[mm]
掘削幅 3500[mm]
バラスト処理能力 240[m^3/h]
作業速度 30~240[m/h]
回送時自走速度 50[km/h]
回送時牽引速度 65[km/h]
エンジン GM 142[PS]/1800[rpm]
発電機 100[kVA]/1500[rpm]

 

■文献

1)吉岡 心平『黄帯を巻いた貨車』,2018年,ネコ・パブリッシング.

2)Construction Cayola『Dégarnisseuses-cribleuses : 75 ans à avaler du ballast !』https://www.constructioncayola.com/rail/grands-formats/2020/12/17/131608/grand-format-degarnisseusescribleuses-75-ans-avaler-ballast(2024/04/15取得).村山 煕「新しい保線機械」『交通技術』15巻10号,1960年,pp.32-33.

3)村山,前掲2.掲載写真の時点で明色に塗られている。

4)伊能 忠敏「機械化保線の技術発達とその問題点」『JREA』22巻4号,1979年,pp.14-17.

5)越前 忠夫・須藤 博「バラスト更新機作業」『新線路』33巻9号,1979年,pp.40-41.単線式軌道更新法とその失敗については3 CB 5(ヤ100)の記事を参照のこと。

6)吉岡,前掲1.

7)軌道技術研究会編『保線ポケット事典(第3版)』,1960年,鉄道現業社.