BUC 200

写真:東海道新幹線用のBUC 200
『JREA』37巻10号,1994年,グラフp.

 


 

BUC 200は三菱重工業製の道床交換作業車である1)。「トンネル道床更換機」「トンネル兼用バラスト作業車」とも呼ばれる。

 

■概要

東海道新幹線では目黒工業製バラスト作業車を用いることで道床交換作業の機械化がほぼ達成されていたが、トンネル内だけは人力作業(1夜で20~30mの施工)のままであった。従来のバラスト作業車は線路の左右両側からスクレイパーチェーンを挿入する必要があるが、新幹線のトンネルでは上下線間の通路とマクラギの間に挿入の余地が無いため、作業車が使用できなかったのである。このためトンネル内でも使用できる機械として開発されたのがBUC 200であった2)

 

改良前、初期の状態と思われるBUC 200
前面下部にアンダーカッターが、上部にウェストコンベアが見える。
近藤 邦弘「東海道新幹線の線路保守の現状」『JR gazette』51巻10号,1993年,pp.36-40.

 

改良後の状態と思われるBUC 200
車体後方上部にもキャビンが設置され、またウェストコンベア先端に飛散防止カバーと思わしきものが設置されている等の変化が見られる。
森川 義行「TBSによる分岐器道床更換」『新線路』53巻10号,1999年,pp.10-14.より

本機は1992年度に1台が試作され、翌1993年度に改良が加えられた3)。開発とは当時、新たに鉄道用保守機械の製造へと参入した三菱重工業相模原製作所で行われた4)

 

BUC 200のアンダーカッター挿入方法
望月 辰夫「バラスト作業の効率化」『新線路』45巻1号,1991年,pp.16-19.より

構造は従来のバラスト作業車と異なり、スクレイパーチェーンの付いた片持ち式のカッター(アンダーカッター)を進行方向左側から挿入する方式である。アンダーカッターは油圧制御によってトンネル壁面側から挿入する構造となっている5)。また操作者は前方(アンダーカッター側)の連結棒上に設置された座席から操作する構造であったという6)

BUC 200の登場により、トンネル内でも1夜で40~50mの道床交換が可能になった7)。一般の区間においても使用することが可能で、またトンネルと同じく従来のバラスト作業車では対応できない、分岐器設置個所の道床交換作業にも用いられたという8)

 

■諸元

諸元は以下の通り9)

作業速度(最大) 60[m/h]
作業速度(最小) 30[m/h]
掘削深さ(マクラギ下) 200~300[mm]
掘削幅 3400~4300[mm]
最大カント量 200[mm]
回送速度 70[km/h]以下
通過可能最小曲線半径 100[m]

 

■文献

1)形式名は森川 義行「TBSによる分岐器道床更換」『新線路』53巻10号,1999年,pp.10-14.より。また日経産業新聞「鉄道保線車両 交通システム部に移管 三菱重工、効率改善へ集約」2001年5月23日p.18.に三菱製保守用車として本機種の写真が掲載されている。

2)名倉 伊三美「新幹線の機械化作業への取組み」『新線路』48巻7号,1994年,pp.18-20.鳥居 末男「施設関係の技術開発と将来展望」『JREA』38巻1号,1995年,pp.23-27.望月 辰夫「バラスト作業の効率化」『新線路』45巻1号,1991年,pp.16-19.

3)日本鉄道技術協会「東海道新幹線」『JREA』37巻10号,1994年,グラフp.土井 利明・名倉 伊三美「東海道新幹線における保守用車故障対策の取り組み」『日本鉄道施設協会誌 』34巻6号,1996年,pp.45-48.

4)三菱重工業相模原製作所「待望の新製品現る!鉄道保全車両あれこれ」『相製ニュース』363号,1994年,pp.2-3.

5)日本鉄道技術協会,前掲3.望月,前掲2.

6)森川,前掲1.

7)名倉,前掲2.

8)森川,前掲1.

9)田中 宏昌・磯浦 克敏編『東海道新幹線の保線』,1998年,日本鉄道施設協会.