■概要
多目的レール運搬車は従来鉄製トロ3台で行っていたレール運搬作業の安全性向上のために導入された車両群である。
多目的レール運搬車は荷受台、発電機搭載用台車、監視台車等から構成されており当項目の工事用運搬台車(マルチトロ)は荷受台部分にあたる。
鉄製トロを使用してのレール運搬時にレール可動受台部に工具等があると受台の可動が阻害され横取装置通過時に車輪にかかる横圧が大きくなって脱輪する事故が発生した。事故後注意喚起ステッカーを貼るなど受台可動阻止を防ぐ対策が取られたが並行して物理的に工具等が介在しない構造である本車両の配備が進められることとなった。
本車両は平成15年から平成19年までの間に約30編成が導入されている。
なお、車両は完全な新製ではなく台車部分は鉄製トロを流用している。
(そのため多目的レール運搬車と鉄製トロとで製造年が大きく異なっている)
■事故による対策措置
平成28(2016)年3月に日中作業中にレール積卸機の横行ビームが隣接下線に停車中の列車に接触するという事故が発生した。レール積卸機の横行ビームは台枠と同じ向きにするとロックが自動解除されるが、ピンを強制的に外すことで安全装置を解除し台枠と直角方向のまま旋回させたものである。結果、隣接線建築限界を支障し事故が発生した。この事故以後鉄製カバーを溶接して安全装置を解除できないように対策が為されている。
■諸元
主な仕様は以下の通りとなっている。
全長 | 17,300[mm] |
全高 | 2,200[mm] |
全幅 | 2,700[mm] |
自重 | 15,000[kg] |
最高被牽引速度 | 40.0[km/h] |
最大積載量 | 23,000[kg] |
4本アーム式で25mの60kg/レール15本の積載が可能となっている。
(銘板には最大積載量22,500kgとあるのはこのため(60[kg/m]×25[m]×15[本])
■制動装置
主ブレーキ | 貫通空気ブレーキ |
駐車ブレーキ | 手動式 |
■レール積卸装置
吊り下げ荷重 | 700[kg]未満 |
本体の旋回 | 自由 |
横行ビームの回転 | 90[度] 片側 |
横行ビームの角度調整 | 約±10[度]以内 |
■脱線復旧用ジャッキ
受台下に脱線復旧用ジャッキ及び工具箱等を収納するスペースを有している。
参考文献
1)大石隆明『多目的レール運搬車 ワンフレームトロの導入と管理』,新線路,62巻6号,鉄道現業社,(2008.06)
2)早川稔『レール運搬のワンフレームトロの横行ビームが列車に接触』,新線路,72巻1号,鉄道現業社,(2018.01)
15T-380N-M