日立製作所の軌道モータカー


 

■概要

日立製作所は日本の代表的な機械メーカーのひとつである。

鉄道車両製造の分野においては、電車をはじめとする本線用の車両や、産業用機関車の作例が多い。
しかしながら、保守・建設用として製造され、MCDBの取り扱い対象となる「軌道モータカー」の範疇に含まれる機械も、ごく僅かであるが国鉄向けに製造している。

形式の命名規則は以下の通り。

文字順 内容 意味
1 動力伝達方式 M:機械式、H:液体式
2 最終駆動方式 C:チェーン式、R:ロッド式、G:歯車式
3 サフィックス 形式変更を示す
4 運転整備重量 単位:[t]
5 車軸配置 動軸数をアルファベット、従軸数を数字で示す
2台車以上の場合は文字を分ける
(例:2台車で動軸4…BB)

 

製造が確認されているのは以下の3例であるが、どれも日立の標準的な産業用ディーゼル機関車と同型か、それをベースにした設計である。

これらは全て1960年代の作例であり、大型軌道モータカーというジャンルが確立する以前の特異な事例であったと思われる。

 


 

3軸ロッド連動式の25t機。
軌道モータカー的用途を目的として製造されたものは、能登線の建設工事用に1両が存在したと思われる。

 


 

(日立製作所,1963,p.2より)

2軸ロッド連動式の20t機。
軌道モータカー的用途を目的として製造されたものは、東海道新幹線の建設工事用に4両が存在した。

 


 

2軸ボギー式の45t機。
東海道新幹線用の大型軌道モータカーとして1両が存在した。
片台車駆動で大型クレーンを搭載するのが特徴である。

 


 

■文献

秋本 清・増原 章右・石丸 一幸「新幹線用軌道モータカークレーン」『車両技術』106号,1967年,pp.27-32.
日本国有鉄道名古屋幹線工事局編『東海道新幹線工事誌:名幹工篇』,1965年.
日立製作所「日立HRA-20B形液体式デイーゼル機関車」『車両技術』85号,1963年,pp.2-4.
日立製作所『日立液体式ディーゼル機関車納入先一覧表(昭和6年~44年)』,刊行年不明.
湯本 幸丸『写真解説保線用機械(改訂増補5版)』1980年,交友社.