HTR600RW

概要


HTR600Rシリーズのうちラッセル除雪装置を前後車両の前位側に装備し、重連で高速除雪を行えるようにした機種。
除雪装置の付け替えを行えば通常の単車のモータカーロータリーとして使用することも可能である。

当形式は、JR北海道の老朽化したDE15形式とモータカーロータリーの置換えを目指して2002年に開発がはじまった。最初に試作された2両はN-MCR600を名乗る。
DE15形式は1250~1350馬力の出力を有するが、モータカーロータリーでこれに相当する出力を得るためにHTR600Rを2両連結した重連としている。

重連運転にあたり前後の車両での速度差を抑えるためにエンジンを同期させる制御を行っているほか、進行方向前部車両の運転台のモニタ装置にて後部車両のエンジン・油圧・電気関係・燃料・作業装置の状態を確認できるようになっている。
連結部は、車体間に生じる上下・左右方向の差動やローリングないしピッチングを抑制できるよう三点で連結するようにしている。

当形式は、重連による高速ラッセル除雪車としての形態のほか、単車のモータカーロータリーとしての形態にすることも可能である。多目的に使用することができるよう、ラッセル除雪装置をすみやかに着脱するための除雪装置用着脱装置を備えている。これはラッセル除雪装置を自ら上下させて着脱するために除雪装置本体に油圧シリンダを取り付けたものである。これにより着脱の際に従来必要であったクレーンやサンドルといった機材・器具が不要になっている。

2002年に試作車が1編成製造され、留萌本線深川-留萌間で試用された。除雪性能に問題はなかったが、保守用車であることから停車場前後ごとに輸送指令との進路構成の打合せが発生し、従来の排雪列車よりも大幅に所要時間が伸びてしまうことが判明した(およそ2倍~2.5倍)。そこで、2004年からは線路閉鎖の手続き上、条件がよい根室本線滝川-富良野間で運用されることになった。
2005年には停車場前後ないし停車場間をまとめて線路閉鎖することで輸送指令との打合せ箇所を省略できるようにした「一括線路閉鎖方式」が導入された。これにより所要時間の伸びを最小限に抑えることに成功し、当形式は新たに室蘭本線岩見沢-追分間、札沼線桑園-石狩月形間へと導入された。

更に本州でも2010年に青い森鉄道へ東北本線八戸-青森間が移管されたことに伴い、同社の保線・除雪作業を受託している仙建工業が当形式を導入した。

 
諸元


■ 寸法・重量

長さ(重連) 23,920 mm
2,740 mm
高さ 3,930 mm
軌間 1,435 mm
軸距 4,550 mm

 

■ 牽引性能

勾配 牽引重量 単車 牽引時
水平線 250 t 55 km/h 45 km/h
10 ‰ 220 t 55 km/h 10 km/h
25 ‰ 100 t 50 km/h 10 km/h

 

■ 排雪性能

ロータリー 重連ラッセル
最大除雪量 3,300 t/h 18,000 t/h
最大除雪幅 5,200 mm(段切翼6,000 mm) 5,200 mm

 
参考文献


1)株式会社NICHIJO, 『HTR600RW』, https://www.nichijo.jp/wordpress-dir/wp-content/uploads/2021/03/HTR600RW%EF%BC%88KH1230I2%EF%BC%89.pdf
2)伊藤修二, 『高性能排雪モータカーの開発』, 新線路, 56巻11号, 鉄道現業社, 2002.11
3)板東茂巳, 『高性能排雪モータカーの実用化』, 新線路, 57巻11号, 鉄道現業社, 2003.11
4)三上史郎, 『ラッセルモータカーの導入に伴う運転取扱い方式』, 新線路, 鉄道現業社, 59巻11号, 2005.11

 



※N-MCR600呼称

※N-MCR600呼称