52_磁気浮上式鉄道の保守用車


この項では磁気浮上式鉄道(主に中央新幹線)の保守用車について取り扱う。

リニアモーターカーはガイドウェイを走行する。ガイドウェイは従来の鉄道のレールに相当する構造物と、モーターに相当する地上コイルから構成される。
レールの上を走行する一般的な保守用車とは走行方法、使用用途が異なるため大きく見た目が異なるものが多い。

保守用車の用途についても外見から類推することは困難なものもあるが、このサイトで代表的なものとしてガイドウェイ運搬架設車、トンネル点検車、本線牽引車の3つが紹介されている。

△リニアの保守用車の解説。文献2)より

なお、文献3)に中央新幹線建設で投入される車両の名前を見ることができる。
文献中に名前が確認できるのは以下の表の通り。

機械名 諸元 備考
高所作業車 9.7[m]
場内運搬連絡車 10[t]
保守用車 32[t](トラック) 文献4)で「保守用車(汎用)」「保守用車(移動用)」とあるものを指すと思われる
フード架設台車 32[t](トラック)
ダクト蓋敷設車 32[t](トラック)
ケーブル延線車 32[t](トラック)
ガイドウェイ架設車 32[t](トラック)  この車両のことと思われる
位置検知調整車 32[t](トラック)
小型電気工事用車 32[t](トラック) この車両のことと思われる
モルタル注入機台車 2[t](トラック)
ロックボルト運搬車 2[t](トラック)

磁気浮上式鉄道の保守用車は詳細が不明なものも多いが上記表のうちケーブル延線車およびダクト蓋敷設車についてはこちらで解説されている。
どちらも山梨リニア実験線用にフジクラが日本鉄道建設公団及びJR東海と共同開発されたものである。

・ケーブル延線車
トレーラー、ケーブル台車および敷設作業車から成り1)、全長約25[m]、き電ケーブル(約15[ton])を積み込むと総重量約40[ton](内訳はトレーラー約11[t]、ケーブル台車約23[t]、敷設作業車約8[t])にもなる。

△ケーブル延線車外形図。文献6)より

延線車はトレーラーに牽引され、両側面の案内輪でガイドウェイ内を進み、走行速度と同期し低張力でケーブル台車から繰り出すことが可能。
ケーブル台車は本線カント10[°]に自動追従し常時水平を保ちつつケーブルを安定的に繰り出す。操作室はケーブル台車の前端部に設置され延線装置の操作盤、制御盤、集中監視用ITVモニター及び連絡装置で構成されている。ケーブルは敷設作業車を通りガイドウェイ外側にあるダクト内に一条ずつ延線する。

なお、後退運転は10[km/h]以下と遅くまた運転席からの見通しも悪いためダクト蓋敷設車を逆向きに連結してダクト蓋敷設車の前進運転で回送できるようになっている。

ケーブル延線車は2台が製作された2)

・ダクト蓋敷設車
ガイドウェイ外側にあるケーブルダクトへエアバランサ装置、真空式吸引器を用いてダクト蓋(60[kg/板])の取り卸しを行う装置である。走行路面の縦断勾配最大40[%]、横断勾配(カント)最大10[°]時の不用意な旋回を防止するための水平装置を備えている。

△ダクト蓋敷設車外形図。文献6)より

汎用大型トラックシャシーに機材吊下用の油圧クレーンとダクト蓋吊下用のエアバランサ装置を備える。重量は15.6[t]で最大積載量は機材運搬時は10.5[t]、ダクト蓋の場合は8.6[t](144枚)となっている。

ダクト蓋敷設車は2台が製作された2)

脚注
1)文献5)の表記による。なお、文献6)では「トレーラー」を「牽引車」、「ケーブル台車」を「ドラム台車」、「敷設作業車」を「布設作業車」と表記している。
2)文献6)p.13。ケーブル延線車とダクト蓋布設車に触れて「なおこれらの工事用車両はJR東海と鉄道公団がそれぞれ各2台ずつ製作することにしている。」とある。

 

参考文献
1)双葉鉄道工業株式会社『山梨リニア実験線ガイドウェイの更新』
https://www.futaba-t.co.jp/business/cs_construction/case02/(2023.10.09取得)
2)東海旅客鉄道株式会社『発見リニア未来シティ』
https://linear-chuo-shinkansen.jr-central.co.jp/linearfuturecity/knowledge/(2023.10.21取得)
3)東海旅客鉄道株式会社『中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書 資料編 19-1 建設機械、工事車両ごとの温室効果ガス排出量』
https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/gifu/_pdf/eis2_gifus51-19.pdf(2023.10.25取得)
4)東海旅客鉄道株式会社『中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書 資料編 3-3 建設機械の台数について』
https://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/gifu/_pdf/eis2_gifus03.pdf(2023.10.25取得)
5)『施設・生産技術部門』,フジクラ技報,第100号,株式会社フジクラ(2001.04)
https://www.fujikura.co.jp/resource/pdf/100_18.pdf(2023.10.25取得)
6)横山傑『山梨リニア実験線電気設備施工の機械化』,鉄道電気,第48巻10号,鉄道現業社,(1995.10)