概要
本機種は新潟鐵工所が開発した600馬力級モータカーロータリーである。1992年から2000年頃まで製造された。
従来ながらのモータカーロータリーの置換えだけではなく、DD14形式のような除雪機関車の置換えをも企図して導入されたものが多く、そのために従来のモータカーロータリーよりも高性能化が図られている。
従来は除雪と走行で別々のエンジンを搭載していたものを大馬力のエンジン1台搭載とし、動力を除雪と走行に分配して使う形にしている。したがって、スタイルがMCR-4などに見られる凸形からL形へと変わった。
エンジンはカミンズ・KTTA19Cを用いている。定格出力は当初560 PS/1,800 rpmであったが、のちに600 PS/1,800 rpmとなっている。
走行駆動は油圧ポンプ・モータを用いた静油圧方式(HST)とし、ロータリー除雪時には定速運転が可能となっている。
除雪性能は、最大除雪量が20,000~23,500 m3/hで、最大除雪幅がロータリー側5,200 mm、ラッセル側4,500 mmである。従来のMCR-4の最大除雪量が12,000 m3/h、最大除雪幅がロータリー側4,500 mm、ラッセル側3,600 mmであったことを踏まえると、本機種の除雪性能が大幅に向上していることが分かる。
そのほか本機種では、さまざまな機能について自動化・高性能化が図られている。特筆すべきなのは、当時保線作業に対して持たれていた3Kイメージを払拭すべく魅力的でかつ快適な保守用車となるよう当初より意識して開発されたことである。
これらについては、
1)3Kイメージの払拭
2)運転室の大形化
3)窓ガラスの大形化
4)騒音低減
5)エアコンの設置
6)腰掛の改善
7)モニターテレビの設置
8)点検灯の設置
といった項目が開発コンセプトとして挙げられている。
製造初期の1992年度に製造された個体とそれ以降製造の個体で外観上に変化がみられる。
1992年度製造形の特徴は以下のとおりである。
・前位側妻窓が大形(縦長)
・前位側開戸の下側窓が2枚
・運転室側面の窓が五角形
・機関室側面ルーバーが丸形
量産形の特徴は以下のとおりである。
・前位側妻窓が小形
・前位側開戸の窓が1枚
・運転室側面の下側窓が台形
・機関室側面ルーバーが角形
多くはJR向けに製造されているが、一部第三セクター鉄道向けに製造されたものもある。
製造番号は6000番台であり、細分によらず通し番号で採番されている。
1992年に登場したN-MCR-600の基本機種。
1997年に登場したマルチプラウ装備機種。
JR北海道向けに少数が存在する。
1997年に登場した新幹線向け機種。
山形・秋田・北陸新幹線向けが存在する。
参考文献
1)松田務,『モロ、ハイモ ―除雪型モーターカー見聞録―』, トワイライトゾーンマニュアル14, ネコ・パブリッシング,(2005.12)
2)井上浩,『軌道モータカー入門 N-MCR-600形(1)』, 新線路, 49巻8号, 鉄道現業社,(1995.8)
3)山本博・佐藤清光,『秋田新幹線における効果的な除雪』, 新線路, 52巻11号, 鉄道現業社,(1998.11)