概要
1970年に国鉄施設局保線課により制定された『軌道上を走行する保線用機械設計標準(案)』に基づき、TMC200Bをベースとして改良を加えたもので、キャブや機器類に変更を加えて安全性や操作面での改善が図られている。
キャブの幅、高さが拡大され、座席定員は3名となった。運転室機器配置は従来前位側を向いていたものが、国鉄のディーゼル機関車DD13形やDE10形と同様に横向きとなった。運転者は前位向き右側内向きに座って操作するようになったため、後進時に便利となった。また、側扉が引戸から内開戸となった。
絶縁車輪の配置が変更され、後位側左の車輪が一体圧延車輪で無絶縁となった。また、ピンリンク連結器も絶縁式になっている。
警音器は空気笛AW-2を屋根上に装備するほか、これまでの機種では装備されていた手動サイレンが廃止された。その代わりに補助警音器として電気笛(高低音自動切換式)が装備されるようになっている。
電気回路の一部が変更され、TMC200Bの一部で採用されていた速度警報器は標準装備となり、後照灯が2灯に変更され、作業灯2灯が新設された。代わりに荷台灯・投光器が廃止されている。制動灯は尾灯と兼用になっている。SW類にも変更があり、夜間トンネル用SWが付加され、前・後照灯SWが手動・連動切換に変更となった。なお、前後進切換レバーに連動SWが設けられたため、前後進切換に連動して前・後照灯および尾灯が自動的に切換されるようになった。
離線レール使用時に本線レールの短絡防止のため、横取レール用絶縁金具(H型ゴム絶縁)が付属品となり、転車台使用時の絶縁に転車台下部が絶縁装置付きとなった。また、転車台落下防止の施錠装置が追加された。
空気圧力調整のB6圧力調整弁が、電車・気動車用のB7圧力調整弁に変更され、メンテナンスフリー化が図られた。
エンジン冷却水の熱利用により温水ヒータが運転室に設けられた。また、エンジン水温計が電気式に変更されている。
製造番号783以降、トルクコンバータ逆転付変速機が変更され、トロコイドポンプ付のTDCN-22-1016形となった。これにより、エンジン停止時に牽引される場合、出力軸に連動するとロコイドポンプにより潤滑油が変速機内に潤滑して、焼損防止できるようになった。また、充電発電機の容量がAC1.5[kW]へ、前・後照灯が150/50[W]へ強化された。
製造番号によらず、製造時期や後年の改造などで外見に下記の通り6種類のタイプが存在することが分かっている。
1)初期型
キャブ前面窓が横に細長く、後面窓も左右両端の窓の高さが異なるもの。初期の50両程度でしか確認されていない。
2)1972年頃以降製造型
キャブ前面窓が拡大され、後面窓の左右両端の窓の高さも揃ったもの。
3)1973年頃以降製造型
ラジエータグリルが格子状から斜め形のメッシュへ変更されたもの。
4)1974年頃以降製造型
荷台クレーン装荷の個体について、FOCO製クレーンからHIAB製クレーンへと変更されたもの。
5)1975年~1976年頃以降製造型
前照灯が大型化されたもの。
6)JR東日本改造型
ラジエータグリルの前面に防音用と思われるカバーが装着されたもの。
当然、このほか後年の改造によりさまざまな派生形が生まれている。
1971年の製造開始以来、1989年頃までのべ700両以上が製造され、国鉄および富士重工を代表するモータカーと言っても過言ではない。
製造番号236、265~。
諸元
■ 寸法・重量
長さ | 6,440[mm] |
幅 | 2,990[mm] |
高さ | 3,747[mm] |
軌間 | 1,067[mm] |
軸距 | 3,500[mm] |
車輪径 | 762[mm] |
自重 | 11.8[t] |
■ エンジン
エンジン名称 | いすゞ DH100TP |
エンジン形式 | 水冷4サイクル 6気筒 過給機付 |
エンジン出力 | 160[PS]/1,800[rpm] |
■ 動力伝達
クラッチ | トルクコンバータ付湿式、多板油圧クラッチ |
変速機 | 高低速2段 |
逆転機 | 前後進切換(等速) |
駆動輪 | 前後2軸駆動 |
■ ブレーキ方式
主ブレーキ方式 | 空気ブレーキ |
補助ブレーキ | ネジ式手ブレーキ |
■ 主要装置
転車装置・転車台 | 大型自動転車装置 |
離線装置 | 離線車輪付手押 |
撒砂装置 | 全車輪前後方向切替 |
連結器 | 自動連結器 |
連結器高さ | 880[mm] |
■ 積載荷重・定員
荷台積載荷重 | 2.5[t] |
運転室座席定員 | 3人 |
■ 空気・燃料容量
空気圧縮機形式 | C600 |
元空気ダメ容量 | 140[L](70[L]×2) |
燃料タンク容量 | 120[L] |
■ 牽引性能
勾配 | 積載重量 | 牽引重量 | 単車積載時 | 重量牽引時 |
水平線 | 2.5[t] | 160[t] | 50[km/h]以上 | 45[km/h]以上 |
10‰ | 2.5[t] | 110[t] | 45[km/h]以上 | 20[km/h]以上 |
25‰ | 2.5[t] | 60[t] | 40[km/h]以上 | 15[km/h]以上 |
参考文献
1)松田務 『MC -一般型モーターカー見聞録-』, トワイライトゾ~ン マニュアル11, ネコ・パブリッシング, (2002)
2)尾西定明 『大型軌道モータカーの構造と取扱』, 交友社, (1967)