(写真:東海道新幹線建設工事で使用されていた国鉄向けMTT-55A型 静岡幹線工事局『東海道新幹線工事誌』,東京第二工事局,(1965)p755より引用)
■概要
MTT-15の標準軌版である。確認されているのは、国鉄へ導入されたMTT-55A、近畿日本鉄道(近鉄)へ導入されたMTT-55B、西日本鉄道(西鉄)へ導入されたMTT-55Cの3機種である。
各機種の詳細を下記に示す。
MTT-55A
東海道新幹線建設工事用に導入されたマルタイのひとつである。昭和38(1963)年に5台が製作された。1)
MTT-55B
国鉄と同年に上本町営業局(大阪線を管轄)へ1台が導入されている。2)MTT-55Aとは全長・全幅と原動機が異なっている一方で、前年に南大阪線へ導入されているMTT-13Dと諸元が近似するため、MTT-55Aの私鉄版というよりMTT-13Dの改良型として製作された可能性が考えられる。
近鉄へ導入されたMTT-55B 春永・小林(1970)p116より引用
なお近鉄においては昭和45(1970)年の時点で道床への挿入力と振動力が弱いと判断されており、古いバラストを使用している支線での運用が中心であった。2)やがて昭和55(1980)年10月付で廃車されている。3)
MTT-55C
昭和39(1964)年に大牟田線へ2台が導入されているが4)、10年後の昭和49(1974)年に導入されたMTT-25によって置き換えられている。5)
西鉄へ導入されたMTT-55C 西日本鉄道株式会社社史編集委員会『最近10年のあゆみ』,(1968)p64より引用
MTT-55Aと55Bについては諸元を確認できたので下記に示す。6)
MTT-55A(国鉄) | MTT-55B(近鉄) | ||
全長×全幅×全高 | 5.2m×2.8m×2.8m | 5.4m×2.6m×2.8m | |
総重量 | 10,000kg | 11,000kg | |
原動機 | 型式 | いすゞDA220 ディーゼル |
トヨタ水冷 ディーゼル (トヨタD型?) |
定格出力 | 48ps/1,800rpm | 48ps | |
3相交流 発電機 |
25KVA-3φ-220V -60c/s-4P-1,800rpm |
不明 | |
油圧装置 | 油圧ポンプ 駆動用 電動機 |
無し(原動機より出力) | 不明 |
油圧ポンプ | 吐出量30L/min (1,200rpm) |
不明 | |
常用圧力 | 50kg/cm2 | 不明 | |
タイピング 装置 |
起振用 電動機 |
600W-3φ-200V -60c/s-2P-3,450rpm (8台搭載) |
不明 |
ツール数 | 16本 | 16本 | |
上下昇降用 電動機 |
無し | 不明 | |
伝達機構 | 油圧コントロールバルブ により左右2個の油圧 シリンダに圧油を送り リンク機構を介して タイタンパを上下する ほか左右締固め装置 ごとに油圧調整可能 |
不明 | |
走行装置 | 走行用 電動機 |
無し(原動機より出力) | 不明 |
伝達機構 | いすゞトラック用クラッチ 変速機(前4後1段変速) および逆転機を介して ローラチェーンで 後車軸駆動 |
不明 | |
制動装置 | 4輪制動 | 不明 | |
枕木間の 移動 |
変速機を第1速に入れ2個の 油圧シリンダーでクラッチ ブレーキ連動 |
不明 | |
走行性能 | 6.9~45km/h | 最高45km/h |
■参考文献
1)三浦亮『芝浦グループと保線の関わり』, 新線路, 67巻, 7号, 鉄道現業社, (2013年7月)
2)春永駒男・小林陽三『保線作業機械化の現状と方向について』,近畿日本鉄道技術研究所技報,2巻1号,(1970年12月)
3)吉村隆次『線路と保線』,鉄道ピクトリアル,39巻9号,(1989年9月)
4)『保線用データシート №8 保線機械-その1-』,日本鉄道施設協会,(出版年不明)
■脚注
1)三浦(2013)p52
2)春永・小林(1970)p116
3)河村猛・出口俊和 『近鉄のマルタイ作業』,新線路,41巻10号,(1987年10月)p20掲載 表3
4)西日本鉄道『西鉄の線路・電力・保安・検修施設』,鉄道ピクトリアル,24巻臨時増刊号,(1974年4月)p104
5)吉村(1989)p43
6)MTT-55Aは『保線用データシート』p145、MTT-55Bは春永・小林(1970)p115掲載の諸元表を基に作成