B 45

写真:交通建設のB 45 UE(2000年代製)

 


 

B 45はMATISA製のマルチプルタイタンパーである。

 

■概要

B 40の後継として登場した機種である。B 45は大きく分けて3種類が日本に導入されており、製造年代によって仕様が異なる。

 

(1)B 45 LE(1990年代製)

JR九州向けB 45 LE
MATISA『Les bourreuses de ligne』2013年,MATISA,p.5より

 

B 45 LE側面図
三原(1998),p.33より

日本に初めて輸入されたB 45で、1998年にJR九州が鹿児島支社へ3台を配備した。一般軌道用で1丁づき16頭のシングル機で、トレーラーワゴンを装備しない単車体型であり、バイブレーションコンパクタを車体後方に装備している1)

 

NEMOの検測方式概要図
猪狩(2008),p.45より

B 40まではライニング用検測装置のみワイヤー式であったが、本機種からは全ての軌道検測を「非回転光学検測システムNEMONon rotating Electronic Measuring Optical system)」で行うように改良された。B 40における光学式検測装置はレール面から2.75mと高い位置に取り付けられていたため、取り付けフレームの歪みなどの影響を受けやすく、また作業員が出入り時に光線を遮ってしまうというレイアウト上の問題があった。これに対しNEMOではフレーム歪みの影響を避けるため検測トロリーに直接機器を取り付けており、車体下・レール面上105~135mmという低い位置で検測を行うことで作業中に光線が遮られないレイアウトとしている2)

また本機種はコンピューター化が進んでおり、自動線形補正装置(GAO)とRT1システムにより作業中の状態やシミュレーションされた最適な線形を日本語表示の画面に表示することができる。また作業やシミュレーションの内容はフロッピーディスクへ保存することも可能となった3)

これらJR九州の3台は既に引退済みと思われる。

 

(2)B 45 UE(2000年代製)

交通建設のB 45 UE(2000年代製)

交通建設と大阪市交通局(現・大阪メトロ)向けとして各1台が2006年に製造されたタイプである。JR九州のものと異なり、こちらは分岐器対応のスイッチマルタイで、B 40 UEと同様に横振り可能・ツール先端重ね合わせ可能なC型タンピングユニットを装備し、1丁づき16頭式である4)。また付随車が連結されているが、従来のトレーラーワゴンとは異なる大型車体と運転台を有した構造となっている。

引き続きNEMOを採用しているほか、コンピューターはGAOに代わり、より洗練されたCATTComputer Aided Track Tamping)システムが搭載されている。CATTは入力されたデータから自動で線形補正作業を行うことができる。画面には線名、線別、距離程、曲線などの情報が常に表示され、この画面はタッチ操作が可能である。また、CATTはDOGGDevice Operation and Guidance of track Geometry)と呼ばれる支援システムとの連携も可能である。DOGGは線形データや支障箇所、構造物などの情報を保存してCATTにロードさせることができる。そのため、これまでの機種では必須であった作業区間毎に線形データを入力する作業を省けるようになった。また、DOGGはリアルタイムで無線LANやGPSと連携することが可能で、バラストレギュレーターとデータ共有が可能なほか、障害物に接近すると支障するツールやレールクランプを自動でロックする機能も持つ。軌道検測車からの検測結果もDOGGを介してCATTに反映させることができる5)

交通建設の機番30-16-1-0-05-030は2021年9月に横浜本牧駅へ回送され、2022年9月に海外へ輸出された。大阪メトロのB 45 UEは2023年6月時点で現役の模様である。

 

(3)B 45 UE(2020年代製)

交通建設のB 45 UE(2020年代製)

最新型の分岐器対応型B 45である。日本では交通建設に1台の導入が確認されている。上記のB 45 UEと同様にC型タンピングユニットを装備するが、ツールはレール外側に4組8頭(先端重ね合わせ可能)・レール内側に2組4頭(固定式)を配置する1丁づき12頭式となっている。作業能力は650m/hである。

また非常走行装置を備えており、エンジン故障時も予備モーターで移動することができる。支障物をAIで検知する機能も持つ。運転台などの車体形状は導入年の近いB 56 Cに類似したものとなっている6)

 

■諸元

JR九州向けB 45 LEの諸元は以下の通り7)

全長 17.900[m]
全幅 2.840[m]
全高 3.650[m]
自重 44[t]
作業能力 600~1000[m/h]
タンピングツール 1丁づき16頭
レベリング能力 こう上力2×100[kN]
最大こう上量120[mm]
ライニング能力 こう上力100[kN]
最大ライニング量±120[mm]
ツール振動数 2700[rpm]
エンジン Detroit Diesel 8V-92TA 398[bhp]/1500[rpm]
自走速度(回送時) 80[km/h]

 

■脚注・文献

1)三原 利一「高性能新型マルタイ(マティサB45LE)の導入」『新線路』52巻6号,1998年,pp.32-34.

2)猪狩 信人「マティサ型マルタイ(B45)の特徴」『新線路』62巻2号,2008年,pp.44-46.

3)三原,前掲1.

4)MATISA『Les bourreuses universelles』2013年,MATISA.

5)猪狩,前掲2.山田 正則・沢田 孝道・緑川 和彦「マティサマルタイ入門(B50型)⑤」『新線路』67巻7号,2013年,pp.46-51.山田 正則・沢田 孝道・緑川 和彦「マティサマルタイ入門(B50型)⑥」『新線路』67巻8号,2013年,pp.48-52.

6)株式会社ヤシマキザイ『MATISA(マティサ)社製 マルチプル・タイタンパー』https://www.yashima-co.co.jp/ja/business-solution/pickup/pickup-MATISA.html(2023/06/28取得).

7)三原,前掲1.マティサ・ジャパン「マルチプルタイタンパB-45シリーズ」『新線路』54巻1号,2000年,広告p.

 


 

■B 45 UE