HW

△アイキャッチ画像は参考文献1)より引用


■概要
HW(新幹線用高所作業車)はHigh Aerial Station Wagonの略で新幹線の電車線路で高所作業を行うために開発された車両である。車体前部には固定式の屋根上作業台があり車体後部にはエレベータ装置(高所作業装置)を備えているのが本形式の特徴となっている。

 

■車体構造
ディーゼル機関を動力としてトルクコンバータで後車軸を駆動する1軸駆動となっている。
前後に運転室を持つほか作業台及び高所作業装置に携帯型の運転パネルを取り付けて運転操作を行うことができる。
走行用トランスミッションにHSTを内蔵し0-10[km/h]の定低速走行機能を持ち走行しながらの保全作業を行うことが可能となっている。
また重連機能を持ち司令車は他の車両の速度段切替、ブレーキ操作、エンジン回転数制御ができる。

 

■エレベータ装置
同様の高所作業装置を持つプラッサーアンドトイラー製のMSWは電線や支持物を回避するために多関節の構造となっているが、当形式のエレベータ装置は旋回軸を2軸とし、旋回中心が915[mm]オフセットした構造となっている。この構造によりブーム旋回中心を車体中心から左右にずらすことができ、車体中心真上にある架線にぶつからないようにブームを伸ばすことが可能となっている。

△エレベータ装置を使用した際の高所作業の様子。旋回中心をオフセットさせて車両真上の架線等をかわしている。文献2)より

 

■安全装置
当形式は以下の安全装置を備えている。
・非常脱出装置
制御装置故障時にエンジンを直接操作して保守基地に戻れるようにする
・架線加圧検知装置
架線が加圧されている際に警報を発する
・各種インターロック
運転席切替時、走行モード切替時、作業時等条件が揃わないと操作できないようにする
・逸走防止装置
停車時に運転者がブレーキをかけずに離席すると警報を発しブレーキをかける
・EB装置
速度が15[km/h]超の時に一定時間以上運転操作を行わないと警報を発しブレーキをかける

・作業範囲制限装置
作業用バスケットの位置を監視し高所作業車構造規格で定める安定度が1.3未満になる領域への移動を制限する
・過負荷防止装置
車両を転倒させようとする力を監視し規定値以上になると警報を発する
・障害物検知装置
・エレベータ装置のブーム周囲に透過型の光センサを廃止ブームが架線等に接近すると警報を発する

 

■主要諸元

項目 仕様値
車両重量 27,000[kg]
エンジン定格出力 230[PS]/2000[rpm]
全長×全幅×全高 11,340[mm]×3,000[mm]×4,450[mm]
バスケット 作業範囲 水平方向9,000[mm]×垂直方向8,000[mm]
許容荷重 250[kgf]

 

 


参考文献
1)愛金建設株式会社『事業内容』
https://aikinkk.jp/service/(2023.04.08)
2)塩武久,原聖一,成田光,高野真一,大城健次『新幹線用高所作業車の安全保護技術』,三菱重工技報,第32巻4号,三菱重工業株式会社,(1995.07)