(写真:MTT-21A 片山吉信様所蔵写真)
■概要
昭和43(1968)~45(1970)年に1)にMTT-21A/121Aが45両2)製作されている。
MTT-20と比して数多くの箇所に改良が加えられている。改良点は下記の通りである。
・車体
後述の各所変更に伴い車体が大型化し、凸形の外観が特徴的なものとなった。車体形状は後継のMTT-25および35にも引き継がれたが、MTT-25が電マル最大のヒット機種となった事もあり、電マルといえばこの形という印象を抱く方も多いだろう。
本機種の外観図。全長は8mとなり大型化している。関西鉄道学園(1973)巻頭より引用
・機器構成
原動機を動力源とし発電機や油圧ポンプを駆動させるという根本的な機器構成は変わっていないが、下記の通り原動機から駆動ボックスを介して発電機、油圧ポンプ、変速機に接続する様機器配置が変更された。
本機種の動力系統図。原動機の出力が③駆動ボックスを介して各所へ伝達される配置となった。関西鉄道学園(1973)p24より引用
・出力増強
原動機出力が20Aの76.5psから128psに、タンピング用電動機出力が1,5KWから2KWに増強され、油圧ポンプも20Aの走行用/タンピングユニット昇降用各1個から左右タンピングユニット昇降用各1個・走行用1個・軸バネロック装置用1個の計4個に倍増し全体的に出力増強が図られている。軸バネロック装置は台車の軸バネに設置された油圧シリンダーを押し縮める事でタンピング作業時の上下振動を防止するもので、本機種にて初採用され以降の機種にも引き継がれている。
・油圧転車台搭載
20Aで初搭載された転車台は手動式であったが、本機種より油圧式へ変更されている。
・リモコン搭載
有線式リモコンが搭載され、車外からタンピング装置および作業走行装置の操作が可能になった。
・タンピング装置
20Aと同じくツールを板型と棒形の両方に取替可能である。なお本機種以降はツールが棒形に統一されたため、MTT-1以来の板型ツールの搭載は本機種が最後となった。
・絶縁車輪
20Aの2輪から3輪へ絶縁車輪の個数が変更されている。
なお芝浦製作所と国鉄(鉄道技術研究所)は昭和37(1962)年よりレベリング装置付マルタイの共同開発を行っていたが、本機種の後継であるMTT-25にて実用化され、本機種の生産中はその研究途上であった。本機種は後天的なレベリング装置の搭載が可能となる様設計されていた2)3)が、実際に搭載された例は未確認である。
諸元を下記に示す。
MTT-21A | ||
全長×全幅×全高 | 8.0m×2.7m×2.8m | |
総重量 | 約21,000kg | |
原動機 | 型式 | いすゞDH100P ディーゼル |
定格出力 | 128ps/1,800rpm | |
発電機 | 30KVA-3φ-220V -60hz-1,800rpm |
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油圧装置 | 油圧ポンプ | タンピング用2台:140kg/cm2 走行用1台:105kg/cm2 軸バネロック用1台:140kg/cm2 |
油圧モーター | 走行用1台:105kg/cm2 | |
タンピング 装置 |
起振用 電動機 |
2000W-3φ-220V -60hz-3400rpm |
ツール数 | 16本 | |
1枕木 タンピング時間 |
板形ツール:6~10秒 棒形ツール:4~7秒 |
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1時間あたり タンピング軌道延長 |
板形ツール:200~300m 棒形ツール:300~400m |
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走行装置 | エンジン駆動 | 平坦50km/h,25‰時35km/h |
枕木間の 移動 |
油圧モータ駆動 1~2秒 |
湯本(1967)p51より引用
■参考文献
1)杉下孝治『マルタイの変遷』,新線路,35巻9号(1981.9)
2)『電気式マルチプルタイタンパ(MTT-21A)取扱説明書』,関西鉄道学園,(1973.3)
3)湯本幸丸『写真解説 保線用機械』,交友社,(1967)
4)片山吉信『マルチプルタイタンパの歴史』,(2024)
■脚注
1)杉下(1981.9)
2)片山(2024)
3)『社内ニュース』,社内報 月刊京成,179号,(1969-5)p11
4)松田務 『腐ってもマルタイ 今、明かされるマルタイのすべて…』,トワイライトゾ~ンMANUAL5,ネコ・パブリッシング(1996)
5)『三岐鉄道 マルチプルタイタンパーMTT21A』,https://www5c.biglobe.ne.jp/~n-craft/index/hobby/msr_fram/sangi_sagyo/sangimtt.htm
(2024年6月9日閲覧)
6)三岐鉄道株式会社『三岐鉄道50年の歩み』,(1981)p82
7)M51型マルタイテスト推進委員会『M51型マルタイ』.名古屋鉄道株式会社研究報告,28巻(1983)
8)米山三郎『線路と保線』,鉄道ピクトリアル,37巻臨時増刊号,(1987.10)
9)大嶋雅夫『線路施設と保線』,鉄道ピクトリアル,47巻臨時増刊号,(1997.1)表4「軌道保守用重機一覧表」(平成8年9月現在)に記載がないため。
MTT-21A
三岐鉄道が保有していた元国鉄機 三岐鉄道株式会社(1981)p82より引用
国鉄においては昭和43(1968)~45(1970)年にかけて40両1)が導入された。JR各社へ継承された個体は未確認であるが、平成8(1996)年時点でJR線上からは淘汰されている。4)国鉄導入分の内、多治見保線区5)に配備されていた1両が昭和55(1980)年12月に三岐鉄道へ譲渡されている。6)当時の同社は全線のPC枕木化工事および保線作業効率化を進めており、同社初のマルタイとして導入された。6)平成8(1996)年時点でも残存していたが4)、その後廃車となり現存しない。
導入時期不明であるが名古屋鉄道(名鉄)にも2両導入され7)、平成8(1996)年時点でも1両が残存していたが4)、こちらも廃車済である。
MTT-121A
『社内ニュース』,社内報 月刊京成,179号,(1969-5)p11より引用
MTT-21Aの標準軌版である。昭和44(1969)年に1両が京成電鉄に導入されている。3)昭和52(1987)年時点で在籍が確認できるが8)、遅くとも平成8(1996)年までには淘汰されている。9)