GT240-1


■概要
小松製作所が機械化作業の一環として平成2(1990)年度にJR東日本と共同開発した道床更換作業車(バックホウ搭載モータカー)である1)
当型式と発生土砂運搬用のベルトコンベア付き二転ダンプトロ5[両]ないし4[両]、そして新バラスト散布用のホッパー車4[両]で道床更換編成を組む。

 

■当型式の開発と配備
1990年代に入ると道床交換作業が人力から油圧ショベルによる機械化作業へ移行が進んでいた。平成元(1989)年6月には小松製作所からPC15TやPC40Tといった軌陸バックホウが発売され普及が進んでいた。しかしながらこの当時の軌陸バックホウは履帯で軌道上を走行するタイプであったため走行速度が2.0[km/h]程度と離載線する踏切から現場までの高速での移動要件を満たすことが難しかった。

そのため高速での回送が可能で大量の資材の搬入・搬出が可能な本格的な機械編成の方が有利との考えから軌道モータカーに油圧ショベルを合体させた当型式を含めた機械編成群を開発することとなった3)

平成元(1989)年度にTMC100を使用して実物車を作成し試行錯誤を重ねながら開発が進められた2)。平成2(1990)年度に完成し、最初の2[両]は東京地域本社と千葉支社に配備された。その後も配備は続けられJR東日本全支社に計9[両]が導入された4)

 

■形状
登場時は写真のような20[t]級の軌道モータカーに小松製作所のPC38UUの載せたものである。バックホウのキャブは2人乗りに改造されこの運転室から回送運転も可能となっている。
前方掘削した発生土砂を旋回して車体中央にあるホッパ装置に投入するとベルトコンベア装置により後方のダンプトロへと送られる仕組みとなっている。
道床掘削作業のほかバックホーのバケットに装備したマクラギクランプを用いてマクラギ交換を行うこともできる。

フル編成は本車を含みダンプトロ5[両]とホッパ車4[両]の10[両]である。1時間当たりの施工数量は掘削作業、新バラスト散布、軌道整備と合わせて6[m]でありこの編成で約4時間稼働が可能であった5)

 

■登場時の主要諸元

形式 GT240-1
エンジン出力 235[PS]/2,100[rpm]
全長 8,750[mm](ベルトコンベア除く)
全幅 2,950[mm]
全高 4,000[mm]
自重 20[t]
走行速度 45[km/h]
牽引重量 250[t](水平時最大)
掘削機 本体 コマツ PC38UU
バケット 0.1[m^3]
エンジン出力 30[PS]
発電機 エンジン式 20[kVA]

 

■無旋回式への改造
当型式は油圧ショベルが旋回して作業を行うものであるため単線トンネル内や隣接線を列車が常時通る状況では掘削作業を行うことができない。そのため実質的な稼働時間が大幅に減少するという問題があった。

その問題を回避するため盛岡支社は気仙沼市の鉄工所とバックホウ無旋回式化への改造を共同で行った。旋回を回避するためベルトコンベアを追加し、ショベルで掘削した発生土砂をホッパー口に投入すると増設ベルトコンベアから元からあるベルトコンベアへと送られるようになっている。

△無旋回式となったGT240-1。文献7)より

ただベルトコンベアを付けた状態だと建築限界を支障するため現地で脱着するようにしている。ベルトコンベアの幅は一ノ関施設区管内の大沢田トンネルの擁壁に当たらない600[mm]のものとしている。

無旋回式への改造は盛岡支社の例が確認できるが他の個体も同様の改造が行われたかどうかは不明である。

 

■軌道モータカー化
油圧ショベルが外されGT275Sに似た箱型運転台が取付られた。所属も9[両]全て東京省力化軌道工事区となった。道床交換作業に従事しているが純粋に軌道モータカーとして使用されている。軌道モータカー化した時期は不明であるが省力化軌道工事が始まった平成10(1998)年頃か1回目の全般検査が行われた平成14(2002)年前後ではないかと思われる。

△バックホウが撤去され軌道モータカーとなった。

参考文献
1)『道床更換作業車の導入』,新線路,第45巻5号,鉄道現業社,(1991.05)
2)菅原清孝・本間行夫『無旋回式道床更換作業車の開発』,新線路,第48巻6号,鉄道現業社,(1994.06)
3)『TC型省力化軌道工事を始めます』(2019.02.14)
https://www.jreast.co.jp/press/2018/oomiya/20190214_o01.pdf(2023.07.07)
4)徳永薫『鉄道道床交換システム』,建設の機械化,No.529,日本建設機械化協会,(1994.03)
5)調査部会『新機種ニュース』,建設の機械化,No.478,日本建設機械化協会,(1989.12)
6)調査部会『新機種ニュース』,建設の機械化,No.507,日本建設機械化協会,(1992.05)
7)『機械による道床更換』,新線路,第48巻6号,鉄道現業社,(1994.06)

脚注
1)文献1) p.58。
2)文献1) p.58。
3)GT240-1の増備が9[両]どまりで後継機も作られなかった理由として編成が80[m]にも及び留置場所に制約を受けることがあったことが考えられるが、それ以外に軌陸バックホウの軌道上走行速度が著しく向上したことも挙げられる。平成4(1992)年8月に25[km/h]で走行可能なPC40-7H及びPC75UUT-2が発売され現行機のPC78UUT-6では30[km/h]まで向上している。軌陸バックホウは現場最寄りの踏切から離載線可能であることを考えれば軌道モータカーの速度面での優位性はないと言ってよく、軌陸バックホウ利用に傾くのは自然なことのように思われる。
4)文献2) p.8。関東地区のTC省力化軌道工事に従事しているイメージが強いが無旋回式への改造が盛岡支社で行われたことからわかる通りJR東日本の各支社に1編成ずつ割り振るような形で配備が行われたようである。なおTC省力化軌道工事は平成10(1998)年からで、本型式の登場時期とは若干のラグがある。
5)文献2) p.8。この編成は固定ではなく作業量に応じて組み換え可能である。例えば2時間しか間合が取れない場合、基地線が短い場合はダンプトロ3[両]、ホッパー車2[両]の計6[両]編成で作業を行った。


 

 廃車

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※廃車:解体が確認された車両