HTR600R

概要


日本除雪機製作所(現:NICHIJO)が2000年から製造を開始した600馬力級モータカーロータリーである。

同社ではこれに先立ちHTR400RMCR400-Wの開発を行っており、これをベースに600馬力化した機種である。

同社では当形式はあくまで「HTR600R」シリーズであり、装備によってサフィックスが付与される。たとえば段切り装置付きの「HTR600RD」や重連ラッセル仕様の「HTR600RW」、標準軌仕様の「HTR600RS」などである。しかし、当初はユーザ側による呼称を製造銘板に形式として記載しており、体系を理解することが分かりづらい点がある。

たとえば2000年から2002年前後までのJR北海道向けでは、同シリーズは「N-MCR600」を名乗り、段切り装置付きのみ「N-MCR600D」を名乗る。重連ラッセル仕様は区別が付けられていない。一方で車籍を有してJR北海道形式DBR600形を名乗る車両については、メーカ呼称の「HTR600R」を名乗り登場している。すなわち、メーカ呼称とユーザ呼称の体系に乖離があり、製造銘板の形式呼称にその影響が及ぼされている一事例である。

そのバリエーションを具体的に登場順に追って以下に示す。

 


もっとも早く2000年に登場したJR北海道向けの車籍を有さない段切り装置付き機種。
日本除雪機製作所の形式呼称としては「HTR600RD」となるが、当時JR北海道では車籍を有さない600馬力級のモータカーロータリーのことを「ニューモロ」と呼んでおり、その影響で「N-MCR600D」を名乗ったと考えられる。

 


2002年に登場したJR北海道向けの車籍を有さず段切り装置を持たない機種。
JR北海道式の形式呼称では重連ラッセル仕様のサフィックスが用意されていないため、「HTR600RW」の最初の2両がこの名を付与されて登場している。

 


HTR600Rシリーズの中でもっとも一般的な機種。
この名を名乗る最初の車両は、2000年に登場したJR北海道DBR600形である。この車両は車籍を有するために「N-MCR600」とみなされず、メーカ呼称である「HTR600R」が製造銘板に記載されたとみられる。
その後、メーカ呼称の「HTR600R」の名ままJR西日本や仙建工業に導入されるようになり、2002年頃からJR北海道の車籍を有さない車両についてもこの名で導入されるようになった。現在では第三セクター鉄道各社でも導入されている。

 


2000年に登場したJR東海向け機種で、実質的にHTR600Rと同一である。
製造銘板には日本除雪機製作所のほかに納入元として日本車輌製造の名前が刻まれている。

 


2002年に登場した重連ラッセル仕様の機種が、2004年製造の車両よりメーカ呼称である「HTR600RW」を名乗ったもの。
除雪装置を付け替えることで単車のモータカーロータリーとしても使用可能である。
JR北海道向けのほか仙建工業向け(青い森鉄道線内用)が存在する。

 


2006年に登場したHTR600Rをベースにした標準軌向け機種。
仙建工業向けに1両のみ製造され、秋田新幹線(田沢湖線)岩手県内区間で使用されている。

 
参考文献


1)株式会社日本除雪機製作所 社史編纂委員会, 『じょせつき : 創立50周年記念社史』, 日本除雪機製作所, 2012年
2)『ニューモロ会議が開催された』, 新線路, 48巻6号, 鉄道現業社, 1994.6