(写真:平成15(2003)年当時日本電設工業(NDK)で運用されていたRL050。トロリ線延線作業中で、NDKにおいては左端に見切れているRG200とセットで稼働させていた。キャブ内は無人で作業床から遠隔操作している様子も分かる。
『軌陸両用車はマルチな異能トラック Pick up the 軌陸両用車』,特装トラック完全バイブル,講談社(2006)p57より引用
高所作業装置展開状態のRL050。3本のマルチアクションリンクで作業床を支持している。
■概要
平成9(1997)年に日本電設工業(NDK)とアイチコーポレーションが共同開発した軌陸高所作業車である。1)
NDKとアイチは平成7(1995)年にRG200(軌陸延線車)を共同開発しており、本機種はそれに続くものである。また、開発前年の平成8(1996)年には、アイチ社内における鉄道業界向けの販売部門であったマーケティング部鉄道課が第二事業部鉄道部へ改組しており、同社では本機種の開発を鉄道業界への本格進出の第一歩と位置付けている。2)
技術的にも、油圧駆動による鉄輪走行機能が初めて用意され2)、この装備はやがてアイチ製軌陸車の標準装備となるので、その後の基礎を築いたといえる。この他、作業床からの遠隔操作機能や、軌間可変機能(狭軌~標準軌)についてもこの時点で用意されている。1)3)
また本機種のみの特徴的な仕様として、マルチアクションリンクと呼称される3本のリンクによって作業床を支持する高所作業装置を搭載している。比較的単純な構造ながら、作業床の操作台からジョイスティック1本で作業床の水平移動操作を可能としている。1)
作業床の操作台。右側に見えるジョイスティックで作業床を水平移動させる。
佐藤(2003)より引用
後継機種が無いまま平成25(2013)年頃に製造終了となったが4)、製造期間は実に15年以上のロングランとなり、アイチにおける比較的初期の機種ながら今なお稼働を見ることができる。
各部諸元は下記の通り。
作業床 | 最大地上高 | 5.6m(レール上面より) |
積載荷重 | 450kg(吊り上げ装置なし) | |
最大側方 作業範囲 |
3.3m | |
内寸法 | 全長3.0×全幅1.8m ×手すり高さ0.9m |
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リンク装置 | 起伏角度 | -4~64° |
起伏速度 | -4~64°/27sec(上) -4~64°/35sec(下) |
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スイング角度 | 左右各45° | |
スイング速度 | 左45°~右45度/70sec | |
リンク耐電圧 | 30kV(5分間) | |
ジャッキ装置張幅 | 2,080mm | |
軌道走行装置 | 軌間 | 1,067mm |
鉄輪直径 | 385㎜ (踏面高周波焼き入れ) |
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ブレーキ | 油圧式ディスクブレーキ | |
鉄輪の接地・格納 | 油圧作動 | |
転車台 | 転車台作動 | 上下:油圧作動 回転:手動(360°全旋回) |
転車台落下防止 | 機械式自動ロック機構 | |
軌道走行性能 | 最高速度 | 45km/h以上 (回送時、直線水平区間) |
制動距離 | 36m以下 (初速30km/h、直線水平区間) |
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57m以下 (初速40km/h、直線水平区間) |
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登坂能力 | 35/1000以上 | |
遠隔定低速 走行速度 |
3~15km/h |
佐藤(2003)p112記載の諸元表から抜粋し作成
■参考文献
1)『アイチコーポレーションの50年』,アイチコーポレーション(2013)
2)佐藤秀明『暮らしを守るすごいヤツ これが元祖はたらくくるまだ!』,The 特殊車両,講談社(2003)
■脚注
1)佐藤(2003)
2)アイチコーポレーション(2013)
3)『ニッポンで働く特装トラック&トレーラ』,特装トラック完全バイブル,講談社(2006)p127
4)令和元(2019)年に開催された第6回鉄道技術展にて頒布されたアイチコーポレーションのカタログによると、平成25(2013)年に本機種の生産は終了している。