■概要
平成16(2004)年にアイチコーポレーションが開発し1）、平成29(2017)年頃まで製作されていた軌陸高所作業車である。2）
同社においては本機種を「軌陸両用広範囲高所作業車」と呼称しており、作業床を後方格納とする等後述する様々な機能により広範囲作業を可能としている。
■構造解説
・高所作業装置
第3ブームまで備えるブーム式高所作業装置である。旋回台をキャブ側に配置し作業床が後方格納となる構成を採用している点が本機種の最大の特徴である。他機種の様に旋回台を後方に配置すると、ある程度ブームの起伏を行わないとキャブに干渉する等してブーム伸縮が不可能であるが、本機種においては若干の起伏でブーム伸縮を可能としている。
作業床が後方格納の場合(左)と前方格納の場合(右)の比較 CABIN vol.88より引用
この配置によりトロリ線より低い位置での旋回が可能であり、作業床の位置が後方となる事で作業時の落下事故の際キャブへの直撃も防止している。また、PTO等のパワーユニットは旋回台とキャブの間に配置され、干渉防止のため旋回台の台座はパワーユニットを避け傾斜しさせている。
なお、キャブ～パワーユニット～旋回台の順に配置され作業床を後方格納とした軌陸車について、アイチコーポレーションは特許を取得しており3）、この影響からか現在見られる後方格納の軌陸高所作業車は本機種および後継機種が大多数である。
この他、後方範囲においては最大6.4mまでジャッキ固定無しでブーム伸縮が可能である点、高剛性ブームの採用と作業床ポストの高さを極力抑えた事により作業床の振動が少ない点、ブームの軽量化により作業床の積載荷重を500kgまで確保した事も本機種の特徴である。
・作業床
「トンネル点検モード」にてトンネル打音検査中の本機種 CABIN vol.88より引用
アイチコーポレーション製他機種と同様に作業床に操作装置を備え、作業床から車両の遠隔操作が可能である。また、作業床を90°旋回させる「トンネル点検モード」とし、トンネルの壁面に近づいた上で打音検査等の各種点検が行える事から、電気作業のみならずトンネル点検用として本機種を導入する事業者も多い。4）
各部諸元は下記の通り。
| 床面高さ | 9.9m |
| 積載荷重 | 2名または500kg |
| 作業床内寸法(L×W×H) | 2,700×1,500×900mm |
| 鉄輪径 | φ385 |
| 対応軌道幅 | 1,067/1,372/1,435mm |
| 鉄輪絶縁 | 絶縁・短絡切替スイッチ |
| 車両寸法(L×W×H) | 5,020×2,180×3,450mm |
| 車両重量 | 7,740kg |
| (JR東日本型式認定番号) | AK-05-027改 |
株式会社アクティオ(2023年6月8日取得)記載の諸元表から抜粋し作成
■参考文献
1)『アイチコーポレーションの50年』,アイチコーポレーション(2013)
2)『JR3社の「トンネル打音検査」の現場で活躍するU565型軌陸両用広範囲作業車』,CABIN,vol.88,株式会社アイチコーポレーション(2015.12)
3)株式会社アイチコーポレーション『軌陸作業車』,特開2004-262277,(2003/3/28)
https://patents.google.com/patent/JP4557496B2
4)株式会社アクティオ『鉄道工事用機械 軌陸高所作業車』
https://www.aktio.co.jp/products/model/s/190407/(2023年6月8日取得)
■脚注
1)アイチコーポレーション(2013)
2)令和元(2019)年に開催された第6回鉄道技術展にて頒布されたアイチコーポレーションのカタログによると、平成29(2017)年に本機種の生産は終了している。
3)参考文献参照
4)CABIN vol.88によると、平成27(2015)年12月時点でJR九州が平成23(2011)年度に5台、JR西日本が平成25(2013)～平成26(2014)年度に5台、JR東海が平成26(2014)年度に1台をトンネル点検用として導入している。
型式 U565
製造番号：743595
製造年月：2014.5