■概要
東武鉄道で使用されている除草剤散布用のトロである。
機械番号より6両の存在が推定されるが、外周からは銘板が確認できないため製造者の特定には至っていない。
とても地味な存在ではあるが、除草剤散布用のトロは同社では古くから使われている。
■初代除草剤散布車
他の鉄道事業者でも除草剤散布用のトロを保有している会社も近鉄を始めとして存在するが、いくら広大な路線網を持つ同社とはいえ6両(推定)の保有という事実は同社が如何に除草作業を重視しているかの裏付けといえるだろう。
東武鉄道では昭和28(1953)年から除草剤散布用トロを使用している。
保線の作業に占める除草作業は現在でも一定の割合を占めるものであるが、昭和24(1949)年度の東武鉄道では実に17[%]あまりを占めていた1)。昭和24(1949)年度からジョーロによる除草剤の手撒きが開始されその割合は年々低下していったものの能率が悪かったためモータカー牽引による除草剤散布用トロの試用が開始された。

このトロは2500[L]のタンク、アジテータ、ポンプ、エンジン、噴射ノズルといった部品から構成されておりエンジンを駆動し水と除草薬をアジテータで攪拌し噴射ノズルで軌間内外に散布する。
1[km]散布するのに概ね500[L]程度消費するので1回の散布距離は4~6[km]程度であるが、駅等に戻り給水することで一晩のうちに何度も散布作業を行うことが可能であった。また備え付けのポンプにより駅等に戻らずとも小河川や井戸等からも給水できた。
初代は3両が存在2)しフル活用することで昭和32(1957)年度の除草作業割合は8年前の3分の1以下の5[%]となるなど1)、保線作業の効率化に貢献した。
■当形式
当形式は2代目ないし3代目にあたると思われるが裏付けとなるような文献はないものの概ね初代の構造を踏襲したものであると思われる。
当DBにも稼働している投稿が多数寄せられていることからも初代同様引き続き活躍していることが窺えるが、令和6(2024)年に後継と思しき松山重車輌工業製のMC0727が目撃されておりその去就が注目される。

脚注
1)文献1) 表-1「除草作業割合」による
2)文献2) p.37 「3.使用実績」の項による
参考文献
1)富田亮一『東武鉄道の除草薬散布車』,新線路,第16巻9号,鉄道現業社,(1962.09)
2)富田亮一『東武鉄道株式会社における除草薬散布車の使用状況』,鉄道線路,第10巻9号,鉄道現業社,(1962.09)