DE-140S-6061

写真:DE-140S-6061(前から2両目)
兼松エンジニアリング「K&E創立50周年記念:技術開発史」http://www.kanematsu-eng.jp/product/history.html(2024/05/10取得).より

 


 

DE-140S-6061は草野産業の吸引式道床交換作業車である。吸引装置は兼松エンジニアリングが製造した1)

 

■概要

帝都高速度交通営団(営団地下鉄)の東西線は、建設費削減のため高架区間の道床厚が薄い設計となっていた。その結果、開業から約10年が経過した1980(昭和55)年頃には早くもバラストの細粒化が進行し、直線区間でも列車が動揺して乗り心地が悪化していた。対策としてつき固め作業を頻繁に行ったが一向に改善しなかったため、根本的対策として道床交換を施工することになった2)

人力による道床交換は重労働であったため作業車の導入が計画されたが、当時の目黒工業製道床交換作業車では東西線高架区間の狭く薄い道床に対応できなかった。このため、道路清掃車のようにバラストを風力で吸引する方法が考え出された。市販されている吸引装置付きトラックを用いて1984年に試験を行ったところ、バラストの吸引が可能なことが確認できたため、これを鉄道用機械に改良していくこととなった3)

 

DE-140S-6061を組み込んだ作業編成図
東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部編『帝都高速度交通営団工務部のあゆみ:軌道編』,2005年,東京地下鉄鉄道本部工務部.より

こうして1986年に開発されたのがDE-140S-6061である。本機種は吸引装置車であり、これに旧バラストを納める真空タンク車(草野産業製)、新バラスト運搬用のダンプトロ、2台のモータカーを併せて使用する。作業時は真空タンク車とダンプトロを切り離し、その間のスペースで旧バラストの吸引と新バラストの投入を行う4)

この作業編成は防音・排ガス対策に力が入れられており、吸引タンク車の騒音(タンクにバラストが当たる音)対策には「畳」が仕様されたという5)

 

■運用

本機種は計画通り東西線高架区間の道床交換作業に使用された。当初は年間1000mの施工計画の下に使用されたが、1993年に年間施工量2000mへの向上を図るため、真空タンク車を1台増備した。しかし、作業編成が長大化し施工場所への回送時間が増えてしまったため、1996年度に吸引装置車も1台増備し、個別の2編成を組んで作業に使用された。その後、営団では年間施工量をさらに4000mまで引き上げることとなったため、1999年度にさらに2編成が追加された6)

 

■諸元

諸元は以下の通り7)

風量 70[m^3/min]
真空圧 -500[mmHg]

 

■文献

1)兼松エンジニアリング「軌道敷吸引装置」http://www.kanematsu-eng.jp/catalog/kidoushiki.pdf(2024年5月8日取得).竹内 一裕「東西線のバラスト交換車両」『Center Cab』86号,2002年,pp.2-8.

2)東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部編『帝都高速度交通営団工務部のあゆみ:軌道編』,2005年,東京地下鉄鉄道本部工務部.

3)東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部編,前掲2.

4)竹内,前掲1.東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部編,前掲2.

5)兼松エンジニアリング「K&E創立50周年記念:技術開発史」http://www.kanematsu-eng.jp/product/history.html(2024/05/10取得).東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部編,前掲2.

6)東京地下鉄株式会社鉄道本部工務部編,前掲2.

7)兼松エンジニアリング,前掲5.