BSC-102

△1970年の新線路誌に出稿された広告より(文献4))。


■概要
昭和43(1968)年度技術課題の成果として製作されたバラスト整理機である。
大編成機械作業を担う一機械として1号機は尼崎に投入され活躍した。

国鉄は輸送需要の変革と労務力需給の困難化に対応するために昭和38(1963)年から作業組織を集約して大単位とする施策を進め昭和44(1969)年度には編成機械群による近代化保守体制へと移行した。当形式は編成機械群に組み込んで使用するために製作されたものである。

 

■構造
軌道モータカーにバラスト整理機能を持たせたもので車体側面にサイドプラウ、前部にフロントプラウ、後部にバラストスイーパが備わっている。サイドプラウで散布したバラストをマクラギ端にかき寄せながら法面形状を作り、フロントプラウでバラストを軌間内にいれ、レール締結装置及びマクラギ面上に残ったバラストはスイーパで清掃されるという造りとなっている。

作業走行は油圧ミッションを用いた無段変速でバラスト処理量に応じた速度調整が可能となっている。

△大型機械化作業編成。文献6)より

作業順序としては線路扛上及びバラスト散布ではバラスト散布直後、マクラギ更換ではコンパクタによる締固め後となっていたようだ。

 

■配備及び改造
1号機は試作機を改良点を改造した上で昭和44(1969)年3月に尼崎(大阪局)に納入となった1)
当形式は大編成機械化作業のために投入されたものであるが、同様の機械として尼崎より先に昭和42(1967)年3月に田端(東京北局)に納入されたマチサのR-71)があり、担当線区全てに当形式が投入されていたわけではない。
またBSC-102の後継機種として発展形であるBSC-3Aという機種がある2)が、どの時点で切り替わったのかについては不明である。

昭和48年(1973)年3月時点で国鉄には芝浦製のバラストレギュレータが6台が在籍していた3)。大編成機械化の対象線区として東京北局、東京南局、東京西局、および大阪局があり機械編成群による作業開始当初は予備機なしの1台ずつの配備であった4)。のちに予備機1台を持ち2台体制なったが5)、東京局で予備機の融通をしていたと考えると計7台のバラストレギュレータが存在していたと見做すのは妥当と思われる。

バラスト処理機は昭和51(1976)年3月末現在で高崎に1、東京北2、大阪3、広島1、新幹線用が2の計9台となっている6)。新幹線用はBRC-1Bと思われるがそれ以外の7台はBSC-102ないしBRC-3A及びマチサのR-7であると推測される。当初配置された局から転属となるものもありつつ継続して使用されていたことが窺える。

昭和50(1975)年度の技術課題でバラストから発生する粉塵防止のため散水装置が装着された7)。既納分についても改造を受けたものがあったと考えられる。

 

■性能表8)

エンジン 6気筒水冷ディーゼルエンジン 146[PS]/1,800[rpm]
発電機 三相 5[kVA] – 220[V] – 60[Hz] × 2
振動モータ 0.2[kW] – 1,750[rpm] – 220[V] – 3Φ – 60[Hz] × 2
バラスト処理能力 バラスト清掃時 800[m/ hr]
バラストカキ込量 0.054[m3]
走行性能 油圧トランスミッション方式
回送時:最高 65[km/h](平坦線) / 32[km/h](20[‰])
作業走行時:12[km/h]
制動装置 2軸 空圧→油圧変換ディスクブレーキ式
非常用ボタン式電気ブレーキ
駐車用ハンドブレーキ
外形寸法 長さ約8.5[m] × 幅約3.4[m] × 高さ約3.0[m]
軸距 3.0[m]
走行性能 50[km/h]
転車装置 油圧昇降手押旋回

脚注
1)文献10)p.6
2)文献7)
3)文献9 p.6 表-1及び文献5) p.18。昭和48年3月末現在のバラストレギュレーターは7台とある。ここにマチサのR-7が1台含まれると思われるが、文献2)によると「(今後のスイーパーは)輸入することなく総て国産でゆく予定です」とあるので残りの6台は全て芝浦製と考えるのは妥当と思われる。
4)文献2) p.10 表-3による。
5)文献13 p.28の表-44『機械設備(1編成)』による。バラストレギュレータの数量は1+1=2とある。
6)文献12 p.84 別表『主要保線用機械総局・管理局別数量表』による。
7)文献11 p.8
8)文献1)及び2)による。

参考文献
1)湯本幸丸『写真解説保線用機械(改訂増補第5版)』,交友社,(1980)
2)秋山宗彦『大鉄における大編成機械作業(1)』,鉄道線路,第18巻9号,日本鉄道施設協会,(1970.09)
3)秋山宗彦・吉村孝治『大鉄における大編成機械作業(5)』,鉄道線路,第19巻1号,日本鉄道施設協会,(1971.01)
4)新線路に出稿された芝浦製作所の広告『芝浦バラストレギュレータ』,新線路,第24巻1号,鉄道現業社,(1970)
5)鬼沢淳『新しい保線機械の開発 -昭和四十三年度技術課題の成果-』,新線路,第23巻6号,鉄道現業社,(1969)
6)田辺健治『大編成機械化作業』,新線路,第24巻4号,鉄道現業社,(1970)
7)松田務『バラスの整理屋 -「バラスト=レギュレーター」とその仲間-』,トワイライトゾ~ンMANUAL : 全国鉄道面白謎探検 7,ネコ・パブリッシング,(1998.11)
8)日本国有鉄道編『日本国有鉄道百年史第14巻』,(1973.12)
9)上田隆三・伊藤宏・石原一比古『昭和48年度技術課題の成果』,鉄道線路,第22巻10号,日本鉄道施設協会,(1974.10)
10)秋元清『保線機械の開発とその経過』,鉄道線路,第20巻6号,日本鉄道施設協会,(1972.06)
11)石原一比古『大型保線機械の歴史・開発とその経過』,鉄道線路,第24巻10号,日本鉄道施設協会,(1976.10)
12)石原一比古『保線機械のデータブック(主要諸元表)』,鉄道線路,第24巻10号,日本鉄道施設協会,(1976.10)
13)草木陽一・中野草八『保線作業の大形機械化その後(4)』,鉄道線路,第17巻12号,日本鉄道施設協会,(1969.12)