■概要
RW(装柱車)は電車線を支持したまま可動ブラケットの交換作業及び一般の装柱関係作業に使用される電気作業車である。RWはRevolving Wagonの略を指す。
装備として旋回式の昇降作業台と架線支持装置を搭載しているのが特徴である。
旧型とマイナーチェンジがされた新型が存在する。本稿では便宜上登場順に第〇世代として扱う。
第1世代RW
■概要
1975年から始まった東海道新幹線の重架線化工事を能率よく施工するために開発された。
電車線を支持したまま可動ブラケットの交換作業及び一般の装柱関係作業に使用されるほか、TWのように延線車と併用しての架線金具の掛替点検作業にも使用可能である。
■構造
旋回式の昇降作業台と架線支持装置を搭載している。
作業台は全長が6,000mmで旋回半径は5,000mm、床面の最大高さはレール面から最大5,000mm(昇降高さ1,350mm)で稼働できる。
可動ブラケットの吊り下げ等を目的に、最大吊下荷重2.0tの小型クレーンを装備している。
また導入後に改良され、運転室前に補助運転台を備えた固定式の作業台が増設された。
■ 諸元
全長 | 9100[mm] |
全幅 | 3150[mm] |
全高 | 4500[mm] |
自重 | 24.5[ton] |
■ エンジン
機関 | 185[PS]/1800[rpm] |
■ 走行性能
最高速度 | 70[km/h] |
第2世代RW
■概要
旧型に引き続き登場した車両。遅くとも1981年には登場しており、またメーカーカタログの記載より型式等は変わっていないものと思われる。
旧型と比較して若干大型化しているほか、運転室が車端に寄っていることが大きな違いであるが、作業機器の構成はほとんど変わっていないものと思われる。
作業台にバランサー受台を取り付けることでトンネル内のテンションバランサーの取替工事等が容易に行えるようになっている。
■ 諸元
全長 | 9350[mm] |
全幅 | 3150[mm] |
全高 | 4500[mm] |
自重 | 25[ton] |
■ エンジン
機関 | 187[PS]/1800[rpm] |
■ 走行性能
最高速度 | 70[km/h] |
RW-2
■概要
電車線の保守、建設用の多機能の電気作業用軌道モーターカーとして開発され、1987年に本四連絡橋公団への納入が1両確認されている。のちにJR四国に引き継がれている。
■構造
本四連絡橋での使用を前提に開発された狭軌仕様の車両である。使用場所が海上である為、強風下での作業上の安全対策、作業台周囲にステンレスを多用した塩害対策が施されている。また特徴的な装備として、作業時にに連絡橋下を航行する船舶への安全確保として油圧開閉式折畳保安シートを備えている。
作業台は1,250mmのストロークで昇降でき、床面の最大高さはレール面から最大4,700mmである。加えてアウトリガーを出すことで左右90°まで作業台の旋回が可能となっている。また、作業台前部の補助作業台を使用することで、5,545mmまで作業スペースを確保可能である。連絡線での使用を前提としており、アウトリガも大ストロークの1,100mmのものが採用されている。
■ 諸元
全長 | 7450[mm] |
全幅 | 2750[mm] |
全高 | 4270[mm] |
RW-3
■概要
1988年に製造されたJR北海道の青函トンネル工務所で確認されている電気作業用軌道モーターカー。
RW-2と似たような構造で、水タンク車MWTと連結され、青函トンネル内の碍子洗浄に使用されていた。
近年確認されている車両は新潟鐵工所製のMCR-4型に酷似しているが、富士重製の同製造年月、製造番号の銘板が貼られていることから、銘板が別車両に貼り替えられたものと予想される。
■構造
~登場時~
RW-2と似たような構造で洗浄用の放水銃が装備されている。
~後年~
新潟鐵工所製のMCR-4型に酷似しており、他のRWのような作業台は確認できない。
MCRではロータリー用の機関室にあたる部分が何もない作業スペースとなっている。
第3世代RW
■概要
1996年の段階でJR東海での確認されている。
新潟トランシスのRWにも設計が流用されていると考えられる。
海外向けRW
■概要
アルゼンチン国鉄のロカ局の首都近郊区間電化用としてのSWと共に輸出が確認されている。
第1世代RWがベースと考えられ、軌間は1676mmの仕様となっている。
参考文献
1.富士重工カタログ 電気作業車(装柱車) [型式:RW]
2.富士重工カタログ 電気作業車(装柱車) [型式:RW]新型
3.一般社団法人 日本鉄道電気技術協会『鉄道電気産業史』,2014年3月
4.新幹線総局電気部工事第二課『新幹線重架線化第一期工事のあゆみ』,1981年3月
5.石井和男,小林正彦「電気設備の保守用車両の種類と活用」『JREA』39巻7号,1996年
6.「最近の情報コーナー」『鉄道と電気』41巻10号,1987年10月
7.北條宏「瀬戸大橋線の機力作業」『鉄道と電気』5巻10号,1994年10月
8.沖田 祐作『機関車表』,ネコ・パブリッシング,2014年