■概要
通常の電車線の流し検査での使用を基本とし延線車と併用しての架線張替作業やトンネル構造物点検車としての機能を盛り込んだ車両である。GWは「General Wagon」の略である。
走行性能としては作業の特性上低速運転/停止の繰り返しがスムースに行えること、35[‰]上での発進/停止が可能なことに重点が置かれている。
また保守用車のイメージ向上のため800系つばめの赤ラインを採用し注意喚呼のため上部を薄黄色、下部を山吹色と黄色系のグラデーションで全車両の塗色を統一している。
GWは2023年3月現在、丸目4灯の第一世代(GW-01およびGW-02)と角目8灯の第二世代(GW-03)の3[両]が確認されている。
■走行装置
トルクコンバータによる推進軸1軸駆動方式とし最急勾配35[‰]においても最高速度10[km/h]まで可変速可能な定低速走行装置を設けている。
■制動装置
主ブレーキとして自動空気ブレーキ、降坂時の排気ブレーキ、重連時の電磁直通ブレーキ、補助及び留置用のバネブレーキの計4種類を備えている。
非常ブレーキスイッチは運転席補助席側及び作業台前後に設け運転席でなくても緊急時に非常停止可能としている。
■運転室
台枠の前端に主運転室、後端に補助運転室を設け留置用ばねブレーキを作動させないと運転台の切替ができない構造としている。運転装置は進行方向左側に設けていて右側には2人掛の助手席を備えている。
過速防止のため運転台に70[km/h]~80[km/h]可変の速度警告灯とブザーを取り付けている。
■連結装置
自動連結器及び2段ピンリンク式連結器と2[m]の連結棒を設け、重連制御運転用に空気ブレーキ管引通し装置、元空気溜引出し管装置、電気配線引通し装置を台枠前後端に備えている。
■作業台
作業台は電車線の保全だけではなく土木構造物検査、架線延線のいずれにおいても対応可能とするため長さ8,750[mm]×幅3,000[mm]と広い空間を確保している。作業台床面高さは3,350[mm]で油圧により900[mm]昇降できるほかカント修正機能により曲線上でも安定した作業を可能としている。流し作業に対応するため可搬式の運転操作装置を設けており作業台上の任意位置で操作可能としている。
土木構造物検査に対応できるよう長さ1,300[mm]×幅700[mm]、昇降ストローク1,600[mm]で600[mm]スライドする構造のテーブルリフターを作業台前端よりに2基並列に設けている。
また、台枠側面部の手摺を折り畳み式の簡易足場に組み立てられる構造にしておりトンネル壁面検査用の作業床にも使えるようにしている。
■高所作業装置
き電線、電柱際などが検査可能な着脱式高所作業用バケットを設けている。無線操縦併用方式とすることでバケット部と地上どちらでも操作可能となっている。ブームに付けられたセンサーによってバケットを完全に収納しないと走行できないようになっている。
高所作業装置の構造は以下の通り。
種類 | 伸縮ブーム型 |
積載荷重 | 100[kg]または1[名] |
作業床高さ | 9.8[m](底面) |
最大作業半径 | 9.4[m](取付位置から) |
作業床寸法 | 0.7[m]×0.6[m]×1.0[m] |
旋回範囲 | 360[°]連続 |
■架線加圧検知装置
き電中における作業台での感電事故防止のため作業台入口には架線加圧検知装置を設け加圧時には作業台昇降階段の出入口を施錠する構造となっている。
■接地ローラー(架線測定装置)
作業台前後には常にトロリ線と接地する構造とした昇降式の架線案内ローラーを設けている。
■電気装置
15[kVA]の作業用ディーゼル発電機を搭載している。作業台の照明には20[W]蛍光灯を28灯設けることで作業場所の視認性工場を図っている。
■安全装置
各車両にそれぞれ新幹線用MSCS95並びに保守用車ATS、保守用車接近警報装置を備えている。
■重連制御装置
緊急時や回送時に重連運転をするため各車両に制御装置を設けている。編成中の1つの運転台から前後進、高低速の切替操作、アクセル、ブレーキ操作並びに燃料制御の操作に対応している。
■横取装置
電気保全車として機動的な運用を行うため車体中央部に油圧モーター駆動式の横取車輪を設けている。
■主要諸元(第一世代)
項目 | 性能 | 備考 | |
外形寸法 | 全長 | 9,000[mm] | 連結面間 |
全幅 | 3,000[mm] | 作業機格納時 | |
全高 | 4,420[mm] | 作業機格納時(レール面上) | |
軌道走行部 | 軌間 | 1,435[mm] | |
軸間距離 | 5,500[mm] | ||
乗車定員 | 運転室 | 3[名] | |
作業員室 | 3[名] | ||
その他 | 重量 | 25,000[kg]以下 | 運転整備時 |
総排気量 | 11,945[cc] | ||
最大定格出力 | 195[kW]/2,200[rpm] | ||
最高速度 | 70[km/h] | 平坦時 | |
30[km/h] | 35[‰] | ||
重連速度 | 55[km/h] | 30[t]牽引平坦時 | |
ブレーキ性能 | 停止距離250[m]以下 | 70[km/h]時 | |
積載荷重 | 1,000[kg] | ||
高所作業機 | 100[kg]/9.4[m] |
参考文献
1)姫野吉泰『九州新幹線の保守用車』,鉄道と電気技術,第17巻3号,日本鉄道電気技術協会(2006.3)