■概要
トンネル内の電車線の張力を保つトンネルテンションバランサの取付作業を行う電気作業車で、TTBはTunnelTensionBalancerの略である。
青函トンネル内のTTB設置工事用としてJR北海道が導入した他、JR東日本の導入も確認されている。
JR北海道所有の個体は狭軌、JR東日本所有の個体は標準軌となる。
■開発の経緯
電車に電力を供給する電車線は気温が変動しても張力を一定に保つためにテンションバランサを取り付けるのが一般的であるが、青函トンネルではトンネル内の気温が20[℃]で安定しており架線の伸縮が少ないことから、テンションバランサを省略しトンネル天井に取り付けられた下束と呼ばれる金具に直接電車線を固定する直留方式が採られていた。
しかし新幹線が共用走行区間を高速走行するにあたり安定した集電を実現するためにTTBの設置が必要となった。
△架線配置図(直留方式) 参考文献1)より
△架線配置図(TTB設置後) 参考文献1)より
■既存工法の問題点
TTBの新設にあたり、電車線の仮設下束への仮引留・TTBの挿入・電車線のTTBへの引留を行う必要があるが、これを従来の人力施工で行うには下記の問題点があった。
・仮引留用の仮設下束を新設する必要がある
・TTB設置場所がトンネル天井面であり、クレーンが使用できない
・TTBの重量が700[kg]と重い
・青函トンネル内の列車間合いが2時間40分と短い
・作業基地から施工場所までが最遠で18[km]と遠い
■開発
上記の問題を解決するため、TTB設置装置が開発された。
架線張力仮受装置とTTB昇降台から構成されるこの装置の主な機能は下記の通りである。
・既設の下束を使用して仮引留を行うことができる
・リフターに装置を搭載することで設置場所に下からアプローチできる
・TTBを人力で持ち上げること無く設置できる
△架線張力仮受装置 参考文献1)より
△TTB設置装置 参考文献1)より
■新工法
新工法では既存工法と比べ架設下束の設置や足場の設置作業が無いため大幅に工程を短縮することに成功した。
施工手順を下記に示す。
1.下束と引留碍子の間にTTB設置装置の仮受ロッドを接続する
2.仮受ロッドの油圧シリンダを縮め、架線の張力を仮受ロッドに移す
3.TTBをトンネルに設置する
4.油圧シリンダを伸ばし仮受ロッドの張力をTTBに移す
■ 諸元(JR北海道 狭軌)
寸法・重量
長さ | 14,500[mm] |
幅 | 2,900[mm] |
高さ | 3,980[mm] |
軌間 | 1,067[mm] |
車輪径 | 762[mm] |
自重 | 33.0[t] |
■ 走行性能
勾配 | 牽引重量 | 単車時 | 牽引時 |
水平線 | 20[t] | 70[km/h]以上 | 70[km/h] |
15‰ | 20[t] | 50[km/h] | 30[km/h] |
30‰ | 20[t] | 30[km/h] | 20[km/h] |
参考文献
1)『青函トンネル電車線更新機械の研究開発報告書』,日本鉄道電気技術協会,(2006.3)
2)新潟トランシス 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 特開2007-290410 「電車線自動張力調整装置の設置装置および設置方法」
https://patents.google.com/patent/JP2007290410A/ja
3)谷口俊彦・板谷登起雄・佐伯吾一・千葉洋平『トンネルテンションバランサ取付作業車の効率的運用について』,平成20年度「建設施工と建設機械シンポジウム」論文集,日本建設機械施工協会,(2008)
https://jcmanet.or.jp/bunken/symposium/2008/2008r17.pdf
4)小池武士『北海道新幹線用TTB取付作業車による施工』,鉄道と電気技術,21巻.3号,日本鉄道電気技術協会,(2010.3)