■概要
ZERO-Gとは鉄道信号部門において初の機械化プロジェクトとして、JR西日本・レンタルのニッケン・JR西日本電気システムにより開発された軌陸重量物運搬車である。
ムーンリフタを搭載することで無重力感覚で吊荷の取り扱いができることからZERO-Gと命名された。
■主な特徴
鉄道信号工事の現場で材料運搬・機器取替に使われていた手押しトロや山越器を不要とし、機械化を行うため様々な機能を盛り込んでいる
1)停電手続きを不要とする構造
通常のトラック搭載型クレーン(ユニック・カーゴクレーン等)ではブームに起伏機能が備えられており、クレーンが架線と接近する恐れがあることから停電手続きが必要となっている。
しかし、停電手続きは一定区間で一日三件までと制限されており、他の停電作業と競合するなど作業計画の立案に制約が発生していた。
そこでZERO-Gではブームの起伏機能を排し、カントなし区間・カント区間(最大105mm)のいずれにおいても車体上部と、上空のトロリ線間が安全な距離以上を保つようになっており直流1,500[V]の電化区間では作業時の停電手続きを不要とした。
これに作業計画を立てやすくなり、フレキシブルな運用が可能となった。
2)アウトリガーを不要とする構造
通常の軌陸トラックでトラック搭載型クレーンを使用する際には車両が作業時に横転することを避けるため車両の両側へのアウトリガーの張り出しが必要であった。
しかし、軌道上には配管路、転轍機その他様々な機器が設置されておりアウトリガーの接地ができない場所が存在する。
ZERO-Gでは、ブームの回転軸(支柱)を中心とし、吊り荷の反対側におもり(カウンタウェイト)を備えている。
これを使い吊り荷とおもりのバランスを機械により自動調整することで「やじろべえ」の用に左右のバランスを保ちながらの作業が可能となりアウトリガー不要の構造とすることができた。
アウトリガーの接地が不要となったことから使用制限場所を減らすとともに速やかな展開・移動に繋げている。

カバー内のウェイトが自動で動くことでバランスを保つ
3)隣接線を支障しない構造
ブームを旋回し最大張出の際でも作業側と反対のブーム(カウンタウェイト側)が作業を行う当該線の建築限界内におさまる構造となっている。
隣接線の建築限界を支障しないため隣接線を列車が走行する場合でも作業を行うことができるため更に作業の自由度を高めた。

4)無重力感覚(≒0G感覚)を生むリフタ
従来の電動チェーンブロックの機能に加えて「吊り荷アシスト機能(電動バランサー機能)」を備えるムーンリフタを用いて吊上げ・吊下げを行う。
これにより作業員は軽く力を加えるだけで微妙な高さ調整を行うことができるほか、手を離すとその位置で吊り荷を保持する機能も備えており、作業員の負担軽減を実現した。
5)安全な運用を支援する安全装置
・保安ブレーキ
・承認区間逸脱防止装置
・横転防止警報装置
・ブーム格納ランプ
・ドア開扉幅制限装置
このように様々な機能を備え、4年間の開発・製造期間を経て2023年2月に使用が開始された。
初年度は実使用の中で改良・改善を行うパイロット運用とし、2024年度より金沢・京阪神・岡山・広島の全4エリアにて使用を開始した。
| 作業半径 (格納位置~側方50°) |
3,600[mm] |
| 作業半径 (側方50°~90°) |
2800[mm] |
| 最大吊り荷重 | 480[kg] |
| 揚程(レール面基準) | 2.05 ~ -1.95 [m] |
■参考文献
1)坂本祐樹・志田洋・天野井祟宏,『鉄道電気工事におけるシステムチェンジの取り組み 「重量物運搬車(ZERO-G)」の開発』,鉄道と電気技術,第34巻8号,鉄道電気技術協会,(2023.8)
2)志田洋,「鉄道信号工事の機械化プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントの取組みに関する一考察」,REAJ第37回秋季信頼性シンポジウム報文集,日本信頼性学会,(2024.12)


